京都妙心寺の禅とメタボリックシンドローム
2010年9月20日敬老の日、京都市右京区花園にある妙心寺大方丈で「楊名寺八段錦・太極拳50年記念の集い」が開催され、213名が参加した。
午前9時、自宅を出発、名神高速を通り、10時30分に妙心寺第1駐車場に着いた。10万坪の広大な敷地にある妙心寺の境内に入ると、線香の匂いがした。
10時50分から、法堂(はっとう)と浴室の2ヶ所を拝観した。法堂は44本の周囲2mの大きな柱からできていた。富士山麓の木を船で大阪まで運び、伏見まで川で、妙心寺まで牛50~70頭で運んだという。
法堂の天井には狩野探幽の最高傑作「雲龍図」があった。この雲龍図は3年前、新幹線JR品川駅構内に、大きなポスターがはってあったので、一度見ようと思っていた。法堂内には、吉田兼好も記している国宝の"黄鐘調の鐘"もあった。浴室は、明智光秀を供養するために作られたという。
昼食は近くにあった花園会館の"花ごころ"で、山芋のとろろ丼のような「冷やし湯葉とろ丼」を食べた。揚げ出し豆腐や赤出しが付いており、湯葉とろは京都らしいまろやかな味がした。
午後2時、大方丈で河野太通(こうのたいつう)妙心寺派管長の講話を聞いた。河野管長は楊名時先生の老朋友で、臨済宗妙心寺派第33代管長に就任されている。日本には臨済宗のお寺は6000あり、その内妙心寺派は3500ある。
禅の高僧のお話を、直接聞くのは初めてだ。太極拳仲間が「近くに座って、頂点まで昇りつめられた管長のパワーをもらおう」と言うので、前から3番目のど真ん中に座って講話を拝聴した。
河野老師は、鴨長明の方丈記や荘子の"故蝶の夢"の話をされた。「荘子は夢の中で蝶となって、楽しく、ひらひらと舞っていた。目が覚めると、人間だった。しかし、今人間であるのが現実か、蝶の時が現実であるのか。いずれも現実で、己であることに変わりはない。・・人の体も心も常に同じではなく、絶えず変化している。今あることが有り難い。それぞれの場で、満足して生きていけばいい」と話された。
老師は太極拳について「最近の人は一生懸命にやるということが少なくなった。禅と太極拳はよく似た所がある。座禅と同じく、太極拳も一生懸命にやっているうちに自己を忘れ無心となる。己が無くなれば、周囲も全て一体化する」と述べられた。
午後3時、80歳になられる老師自らも参加され、120畳の大方丈大広間で立禅、八段錦、太極拳を行った。大広間の正面には「一日一度は静かに坐って身(からだ)と呼吸と心を調えましょう」と書いてあった。