国民医療費と第47回日本糖尿病学会近畿地方会

2010年10月23日

20101113日、大阪国際会議場で第47回日本糖尿病学会近畿地方会(西澤良記会長)が開催される。会長の西澤良記大阪市立大学学長は、私と同じブレイ門下で、米国カロサンゼルスで肥満研究をされていた。

 

一般演題で住友病院内分泌代謝内科の山田祐也主任部長らによる「糖尿病診療における併用薬剤数の増加―当院教育入院における最近7年間の変化」が発表される。2003年から2009年までに教育入院した2型糖尿病2375例について、退院時処方のうち糖尿病薬と併用薬を検討している。

糖尿病薬のインスリン抵抗性改善薬、ビグアナイド薬、糖吸収阻害薬、併用薬である高血圧薬のアンギオテンシンⅡ拮抗薬、カルシウム拮抗薬、脂質異常症薬のスタチンは年々増加していたという。

安易に薬剤に頼らず、生活習慣の是正で代謝改善を目指し、薬剤は厳選することが重要であるとしている。日本の糖尿病治療は、薬剤に頼り過ぎているのかもしれない。

 

816日、厚労省は2009年度の概算医療費が353000億円に上り、7年連続で過去最高を更新したと発表した。2001年と比較すると、医療費は8年間で49000億円(入院17000億円、入院外32000億円)増加している。

922日、全国保険医団体連合会は、32000億円の入院外医療費の伸びの内訳は、薬剤費2300億円、調剤薬局技術料4700億円、人工透析7000億円で、伸びの大半は薬剤費によって占められている。8年間の医科本体の伸びは僅か200億円に過ぎず、歯科は-600億円で、医療費自然増は膨張する薬剤費にあると公表している。

 

1023日午前9時、自宅付近を散歩した。裏の家の柿の木には、黄色い柿が1000個近く鈴なりになっている。甘い果物の美味しい季節になった。「柿が実る頃、糖尿病は悪化する」と糖尿病専門医の女医さんが言っていた。

この8年間の日本の医療費の伸びは、糖尿病性腎症による腎不全治療のための人工透析、糖尿病薬、併発する高血圧、脂質異常症の治療薬など糖尿病関連のものが多い。

開業している同級生に聞くと、「新薬は高いとわかっていても、効果が高く、副作用も少ないものが多いので、どうしても高価な新薬を使ってしまう」と言う。

私達は大学で、少しでもいい薬やいい医療機器を使って治療をすることを教わってきた。医療財源が豊かだった時代は、それでよかったのかもしれない。だが、医療財政が困窮している現在では、コストも考える必要があるだろう。

日本の医療費のパイは限られている。医療費をどの分野に使えば国民にとってよいのか、総合的に考えるシンクタンクが必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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