新しい肥満症診断基準と標準体重

2010年10月 3日

    20101012日、前橋テルサで第31回日本肥満学会が開催された。

101日、午前8時から第1会場で「新しい肥満症診断基準」のシンポジウムがあった。新しい肥満症診断基準(案)のBMIや腹囲基準は、2000年の肥満症診断基準と同じとなった。

異なる所は、①肥満症の診断10項目に蛋白尿(肥満腎症)を加えること、②癌(胆道癌、子宮内膜癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌)もクローズアップすること、③超肥満、重症肥満などの名称を高度肥満に統一し記述を多くすること、④脂肪細胞の量的異常によるとしていた疾患も、質的異常が関与しているので、内臓脂肪の影響について詳しく記載すること、の4点となった。

 

会場から、「BMI2425といった少し太めの方が、長寿であるという報告があるが、BMIの基準はそのままでいいのか」という質問があった。シンポジストの加隈哲也大分大学講師が壇上で「徳永や吉池らの報告に基づいた」と答えられた。

私はフロアから「標準体重を22にしているが、1991年のインターナショナル・ジャーナル・オブ・オベシティのサマリーには、30歳から60歳に適用すると書いている。60歳以降の理想体重については、書いていない」と発言した。

Int J Obes151ページのサマリーには「From these findings, we propose that the ideal body weight is 22×height(m)2. Our recommendations apply to the age group studied, namely 30-59 years」と書いている。

オリジナルの論文が独り歩きをしている。高齢者の標準体重については検討が必要だろうが、肥満の予後はBMIのみできまるものではなく、腹囲や合併症を加味した考え方が大切だ。

 

会場から高度肥満に対する質問がいくつかあった。私はフロアから「みどり健康管理センターのデータでは、男性のBMI35以上の高度肥満は30年間で22倍に増加している。高度肥満の頻度は年齢層で異なり、60歳代では1000人に1人、50歳代では300人に1人、40歳代では150人に1人、30歳代では100人に1人と年々増加してきている。

女性の高度肥満の頻度は、この30年あまり変化しておらず、若い女性ではやせすぎの問題もある。男性では高度肥満が増加しないよう対策をたてる必要がある」と発言した。

みどり健康管理センターは、昭和47年から業務用大型コンピューターを導入しており、簡単に統計を出すことができる。昭和1524年生まれの男性のBMI35以上の頻度は、30歳代の時でも60歳代の時でも0.1%以下と変わっていない。同じように昭和2534年生まれの30歳代の頻度0.33%は、20年経ても変わっていない。

BMI35以上の高度肥満は、20歳になるまでの生活環境に大きく規定されているのだろう。今後、男性における高度肥満の治療と幼少期からの予防が必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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