糖尿病治療のエッセンスと医療費増加

2010年11月14日

20101113日、大阪国際会議場で第47回日本糖尿病学会近畿地方会が開催され、医師・看護師・栄養士ら1433名が出席した。

 

日本糖尿病対策推進会議から10月に発行された「糖尿病治療のエッセンス2010-2011」が話題になった。病院勤務医で糖尿病専門医をしている後輩は「糖尿病合併症の高血圧管理目標値が130/80mmHgと低い。LDLコレステロールも120mg/dlと低い。目標値を達成しようとすると、10種類以上の薬を使うようになる場合もある」と言う。

開業医をしている友人は「高血圧の第1選択薬が高価なACE阻害薬、ARB(アンジオテンシノーゲンⅡ受容体拮抗薬)になっている。高額な薬を処方すると、患者さんの負担が大きくなる。日本の医療費増加の大部分が薬剤費で占められているのは、ガイドラインのためではないか」と言う。

2009年の入院外医療費増加分7600億円の大半は薬剤費7500億円で占められている。ガイドライン作りも手間暇かかり、大変なのだ。英語の論文をたくさん集め、読み、まとめ、何回も編集者と行き来する。基準を下げろという陳情は繰り返し来るが、基準を上げろという陳情は来ない。他の学会の基準にも配慮が必要なのだ。

 

午後3時から治療・統計・疫学のセッションの座長をした。橋本市民病院代謝内科の大橋隆司先生による「当科における糖尿病治療の実態調査」の発表があった。糖尿病患者570名中、初診時血圧130/80mmHg以上の者は72%、LDLコレステロール120mg/dl以上の者は41%となっていた。

「ガイドラインでは降圧目標が130/80mmHgとなっているが、先生は130/80mmHg以上の患者さん全てにARBなどの降圧剤を投与されているのですか」と質問すると、「130/80mmHg140/90mgHgのどちらを降圧目標値とすればいいのか、明確なエビデンスはない。ケースバイケースで判断している」と答えられた。

その通りなのだ。よくわかっておられる。降圧剤にも副作用はあるし、高齢者の場合血圧を下げ過ぎてもいけない。医療費もかかる。ガイドラインは、あくまで参考にするものだ。

 

1114日午前920分、高槻城跡公園へ行くと、隣の野球場で高槻農林業祭をやっていた。大勢の人達で賑わっており、正月用の黒豆の前には100人の行列ができていた。高槻産右近漬(キュウリの糟漬け)、島本町産竹の子佃煮、姉妹都市島根県匹見町の生ワサビを買った。

1030分から、19人で太極拳を行った。小鳥の囀が木の上のあちこちから聞こえてくる。城跡公園の木は4分の1が黄色に、4分の1が赤褐色に紅葉していた。いい空気を吸っていると、気分が清清しくなり、血圧も自然と下がるような気がした。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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