病院輸出と雇用問題

2011年1月18日

日本の雇用状況は厳しく、2011年春卒業予定の大学卒の就職内定率は68.8%と昨年に引き続き大きく凋落し、過去最低となっている。新卒の就職率低下は不景気だけでは説明できず、抜本的な対策が必要である。

 

2011117日の朝刊1面に「日本の病院丸ごと輸出」「中露などまず10件官民で新興国開拓」の2段見出しの記事が載った。

「日本の高度な医療技術や機器、サービスの新興国向け輸出を振興するため、政府はロシアのモスクワや中国の北京・広州、カンボジアのプノンペンなどで官民共同による医療センターの開設に着手する。・・病院の輸出と訪日外国人への医療サービスの提供を合わせ、平成32年までに約1兆円の経済効果と5万人の雇用創出を見込んでいる。・・センターには日本から医師や看護師らを派遣する」と書いてある。

 

中国・広州在住の人と話をした。「広州でも肥満が増えてきている。広州の医療費は東洋医学で1回40009000円、西洋医学で1回1万5000円~2万円かかる。広州市は、この1年間で見違えるように変わり、600m級のビルや黄金色をしたビルが建っている」と言われた。

日本人をどれくらい雇用されているか聞くと「日本人社員は300人おり、現地の人を3万人採用している。中国で生産した方が、人件費が安くつく」と答えられた。 "中国への企業進出のリスクは何か"という先月の日本企業へのアンケート調査では、政治でも経済でもなく「中国の人件費が上がることだ」と答えた経営者が突出して多かった。

中国の人件費が上がれば、企業は人件費がより安いベトナム、インドネシア、インドに工場を移すのだろう。日本の産業は空洞化しつづけ、日本人の雇用は減少し続けてしまう。

 

インド・チェンナイ在住の人と話をした。「チェンナイには、お腹の出た肥満の人が多い。インドはベジタリアンだが、油を料理によく使うので太っているのだろう。子供の肥満も多い。糖尿病の人の割合は10%になった」と言われた。

日本人の雇用について聞くと「チェンナイには300人の日本人が住んでいる。日本企業は、インド人を数万人現地採用している」と答えられた。日本企業がチェンナイで数万人の雇用を生み出している一方、日本では雇用が減少し就職難になっている。

 

働く意欲のある若者が職に就けないことは、国の活力を失わせる。消費者は安い商品を求め過ぎていないか。正規労働者は他者を思いやる心を失っていないか。企業は利益のみを追い求め、雇用を促進することを忘れていないか。「日本国民みんなが助け合って生きればいいのに」と私は考え込んだ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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