ガラパゴス化とメタボ指標・HbA1c標準化
ガラパゴス化とは南太平洋ガラパゴス諸島における生物の進化のように、日本の技術・文化・制度が独自の進化を遂げ、世界標準から掛け離れてしまう現象のことである。技術的には世界の最先端でありながら、世界的には普及しない携帯電話が代表例である。
2011年2月2日の朝刊に「メタボの指標 内臓脂肪100平方センチ以上」「1万2443人のCTスキャン画像データで実証」の見出しで記事が載った。
「メタボリックシンドロームについて厚生労働省の研究班(船橋徹大阪大学准教授ら)は、内臓脂肪の蓄積の状態と心臓病の危険因子の関連を解明するため、三井記念病院など全国9カ所の健診・人間ドック機関と共同で大規模な研究を行った。
CTスキャンによる内臓脂肪の精密な測定値から、年齢や性別にかかわらず、内臓脂肪が100平方センチ以上あると心血管病の危険因子の数の平均値が1つ以上となることを改めて示した」と書いてある。
アジア動脈硬化学会会長は「日本のメタボ診断基準である内臓脂肪面積を欧米では採用しない。欧米ではCTスキャンが日本ほど普及しておらず、日本に対してやっかみを持っている」と言われる。
日本のメタボ基準は世界のメタボ基準に比べ進み過ぎていて、多数派になれないのだろう。
1月29日、京王プラザホテルで開催された日本総合健診医学会で、三家登喜夫和歌山医大教授による「糖尿病検査の標準化HbA1c」の講演があった。
「日本の従来のHbA1c測定値(JDS値)は欧米に追随し、2~3年後0.4%をプラスし国際標準化される。日本の測定法は1994年に開発され、その10年前に開発された欧米の測定法に比べHbA1c以外のものを含んでおらず、より精度の高いものになっている。欧米の人達は、小さな島国の言うことなど聞かなくていいと思っている」と話された。
日本の肥満、糖尿病研究は独自の進化を遂げ、世界水準を追い越し進み過ぎたのかもしれない。
世界標準の問題は肥満・糖尿病に限らず、あらゆる産業やスポーツなどに共通する問題だ。世界標準は必ずしも進化したもの、正しいものとは限らない。日本の食生活はハンバーガー・フライドチキンなど世界標準を追いかけ、高脂肪食・高ショ糖食となり、肥満・糖尿病・心筋梗塞・大腸癌・乳癌などが増加している。
ガラパゴス化はマイナスイメージで捉えられているが、浮世絵・寿司など日本独自に発展し評価されているものも多い。健康にはガラパゴス化の中で日本独自に進化した和食の方が優れている面も多く、肥満・メタボの食事療法は日本食がよさそうだ。