看護師不足とワークライフバランス
2011年2月18、19日、福岡で開催された「第45回糖尿病学の進歩」では、看護師不足が話題となった。
大都市の公立病院に勤務する友人に「日本看護協会は5対1看護、夜勤64時間にしようとしている。7対1看護から5対1看護に変わると、看護師不足になるのではないか」と聞かれた。「中小の病院や、地方の病院は看護師不足で大変になるだろうが、大都市の大病院は大丈夫だ」と答えた。
私立病院に勤務する糖尿病専門医は「看護協会の考えもわかる。年配の先生方は医師や看護師は聖職だと考え、過重労働も当然だと思っている。今の若い医師は仕事もプライベートも大切にするというワークライフバランスの考え方になってきている。病院勤務医は当直明けでも外来・検査で36時間労働を強いられ、労働基準法に違反して働いている」と言う。
日本看護協会の久常節子会長は2010年11月17日、細川律夫厚生労働大臣に対し「夜間交代制勤務に従事する看護職の労働時間に係る最低基準の策定」の要望書を提出し、11月30日厚労省内にプロジェクトチームが立ちあげられている。
病院看護師は2006年81.9万人で、年間離職者数は10.2万人(離職率12.4%)となっている。看護師の離職率が高いのは、夜勤など過重労働が原因とされている。先月、京都日赤病院に入院して手術を受けた友人は「夜中も働いている看護師さんが天使に見えた」と言う。
日本精神科病院協会の山崎學会長は2月の協会誌巻頭言で「看護師の勤務時間は、県や厚生局の立ち入り検査で厳密に検査されている。一方で、医師の過重労働は国の医師抑制政策で頂点に達している。7対1看護が導入された時、民間病院から大量の看護師が国公立病院に引き抜かれて行った」と述べられている。
厚労省OBに「医師不足なのに、国は何故医師抑制政策を取りつづけたのか」と聞くと「医療行政を行うには医師会の協力が不可欠となる。医師数が増えて医療費が増加することを懸念した厚労省と、医師過剰になることを怖れた日本医師会との思惑が一致していた」と答えられた。将来予測は難しい。日本歯科医師会は歯科大学を増やし過ぎ、歯科医師は過剰になっている。
5対1看護、夜勤64時間に対しては賛否両論がある。病院経営者や年配医師は反対するが、子供を持つ女医さんやワークライフバランスの考え方をする若手医師は理解を示す。
看護師不足になって最も被害を受けるのは、大都市圏・県庁所在地以外の地方の患者さんや看護師さん達だ。政策を立案する時、東京だけでなく地方のことも考える必要があるだろう。