糖尿病診療7カ条と仁の心

2011年4月24日

    2011423日、リーガロイヤルホテル大阪で大阪大学内分泌代謝内科同窓会が開催された。今年の新入会員20人が壇上に上がり、自己紹介をした。

 

特別講演は花房俊昭大阪医科大学教授による「糖尿病診療の知と情」だった。花房教授は大阪大学第二内科時代の1年後輩にあたり、クラシック音楽が好きなジェントルマンで、劇症1型糖尿病の提唱者として知られる。

花房教授は「糖尿病診療には理論・理想・建前と実践・現実・本音がある。糖尿病診療で最も大切なことはHbA1cのコントロールでも、血圧や脂質のコントロールでもなく、診療を中断させないことだ」と、自験例を交えて話された。

"糖尿病診療で成功する7カ条"として、①その人の生活信条、プライドを最大限に尊重する、②指示を守らなくても、決して叱らない、③できるだけ話をしてもらい、共感する、④良い点を見つけ出し、とにかく褒める、⑤良い点がなければ、来院したことを喜ぶ、褒める、⑥言い訳を受け入れる、⑦質問には誠意を持って答える、を挙げられた。

長年、糖尿病を診察しつづけた医師ならではの7カ条だ。

 

"被災地における糖尿病患者のセルフケア7カ条"が418日に届いた糖尿病情報誌「DITN」の第1面に載っていた。新潟中越地震を経験された長岡中央病院の八幡和明先生は7カ条として、①水分はしっかりとる、②食事の量を意識する(救援物資は意外にカロリーが高いので残す勇気を)、③体重、体温、血圧、血糖の測定、④治療を中断しない(薬を飲む、インスリン注射をする)、⑤感染症から身を守る(うがい、マスク、手洗いを励行する)、⑥軽い運動や体操をする、⑦ストレスをためない(心のケアが大切)、を挙げられている。

 

同窓会の最後に、今年51921日に札幌で開催される第54回日本糖尿病学会長の羽田勝計旭川医科大学教授から「急遽、大震災時の糖尿病診療に関するシンポジウムを2つ追加することにした」と挨拶があった。羽田教授は、西宮北口の私の家に3度遊びに来たことがある大阪大学時代の2年後輩で、今は糖尿病性腎症の第一人者となっている。

 

病院に勤務している後輩医師は「宮城県の笹かまぼこや岩手県の日本酒、冷凍蠣などをインターネットで注文し、東北地方の食べ物が毎日テーブルの上にのっている」と被災地の産業を心配したり、「被災地で不規則な食生活がつづくと、インスリン注射をしている人の血糖コントロールが難しくなっているのでは」と糖尿病患者の病状を気遣う。

医師にとって、最も重要な資質の一つである仁の心(相手を思いやる心)を持った後輩たちに、賛辞を送る。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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