2型糖尿病はインスリン抵抗性か分泌不全か

2011年5月23日

   2011519日、午前9時から札幌市「さっぽろ芸術文化の館」で第54回日本糖尿病学会の総会が開かれた。 

東日本大震災で危ぶまれていた第46回糖尿病学の進歩は、予定通り2012323日、岩手県盛岡市で開催されることになり、佐藤譲岩手医大教授は「被災地の支援も含め、会員の多くの参加をお願いします」と挨拶された。

 

午前10時から、緊急シンポジウム「災害時の糖尿病医療」があった。岩手県沿岸部で糖尿病専門医をされている先生も、多忙の中シンポジウムに参加されていた。津波で親族を失いながらも1カ月間、毎日診療をつづけられたという。「被災地では食事を選択することはできない。生きて行くことで精一杯だ。患者さんが食事を守れなくても、甘いものを食べても何も言わなかった。血糖コントロールや糖尿病合併症予防は、平時のものだと思い知らされた」と述べられた。

仮設住宅の建設も進んでいるという。避難所生活はプライバシーが保たれず、感染症にもかかりやすい。私が住む伊丹市からも、現在26人のボランティアが仙台空港のある宮城県岩沼市に行って、仮設住宅への引っ越し作業を手伝っている。

 

午後4時から札幌市教育文化会館でディベート「日本人2型糖尿病の主病態は、インスリン抵抗性かインスリン分泌不全か?」があり、1000人が参加した。会場の選択は、インスリン抵抗性を支持する人は24.8%からディベート後21.8%へ、分泌不全を支持する人は63.4%から53.1%へ、わからないは11%から24.9%になった。

模擬テストで「520日のプロ野球、日ハム対巨人戦でどちらが勝つか?」という質問があった。会場の選択は、日ハムが勝つが59.6%、巨人が勝つが26.5%、引き分けは13.3%だった。同じ質問が東京でされていたら、巨人が勝つという選択が多かっただろう。

糖尿病学会の人はインスリン分泌臓器の膵臓を研究している人が多い。肥満学会の人は脂肪組織を研究している人が多い。肥満学会で同じ質問をしたら、インスリン抵抗性が2型糖尿病の主病態だと答える人が多かったかもしれない。

この30年間で2型糖尿病が30倍増加したことは、97%以上の2型糖尿病に過食と運動不足によるインスリン抵抗性が関与していることを表している。2型糖尿病には、両方が関与しているので、結論は出ないと思った。

 両者のディベート後、座長の石田俊彦香川大学教授が下されたファイナルアンサーは「ディベートの後、"わからない"が増えましたね。2型糖尿病の主病態は、インスリン抵抗性なのか分泌不全なのか"わからない"ですね」だった。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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