肥満症薬物治療の可能性とメタボリックシンドローム
6月11日土曜日午前11時30分から、千葉大学横手幸太郎細胞治療内科学教授による特別講演「薬物治療の可能性」があった。「発売間近だった食欲抑制薬シブトラミンは心血管疾患が20%増加したため中止になった。同じく期待されていた食欲抑制薬リモナバンも19000人を対象とした治験で10%にうつ病が発症したため中止となった」と話された。
脂肪吸収阻害薬のオルリスタットは世界149カ国で1500万人が服用しているが、日本では認可されていない。同じ作用機序のリパーゼ阻害薬セチリスタットが治験中になっている。インクレチン製剤のGLP-1受容体作動薬も体重減少作用があり、米国で抗肥満薬として治験中となっている。
欧米では長年使われてきた薬が、合剤としていろいろ開発されている。米国では食欲抑制薬フェンテルミンと抗てんかん薬トビラマートの併用により、1年間で10%の減量に成功している。
また、「現在、日本で認可されている抗肥満薬は、食欲抑制薬マジンドールのみとなっている。メタボリックシンドロームでは、数%の体重減少でも代謝異常を改善することができる。生活習慣病の根本治療薬として抗肥満薬の登場が待たれる」と述べられた。
午後3時45分、学会場近くにある世界遺産の真言宗総本山「東寺(とうじ)」に行った。雨上がりで、蒸し蒸ししている。
拝観入口の近くには岩手県盛岡市から運ばれてきたという"不二桜"があり、そこから国宝五重塔が真正面に見えた。苔むした木の前にある講堂に入ると中は薄暗く、国宝の梵天、不動明王、帝釈天などが並んでいた。隣にある金堂の中には、本尊薬師如来を中央に、左に月光菩薩、右に日光菩薩があった。
庭園の瓢箪池にはオレンジと白のまだら模様の大きな鯉が泳いでいた。瓢箪池のそばには、不開門(あかずのもん)とも呼ばれる東大門があった。1336年東寺にいた足利尊氏を新田義貞が決死の覚悟で攻め、危機に陥った尊氏はこの門を閉めて危うく難を逃れている。
東寺は中高年団体客や若い男女でいっぱいだったが、福島第1原発事故の風評被害によるものか、外人の姿を1人も見かけなかった。
日本では糖尿病、脂質異常症、高血圧の薬は数多く認可されているが、肥満の薬は1種類しか認可されていない。当分、新規抗肥満薬の発売はなさそうだ。日本食をできるだけ食べるようにし、休日は神社仏閣を巡れば、薬物に頼らなくてもメタボリックシンドローム対策になるであろう。