岩手県の肥満・糖尿病と医療特区
午後0時5分、伊丹空港からJAL2183便4K 席でいわて花巻空港に向かった。新潟上空で雲の合間から緑の田畑や集落が見え始め、山形上空では濃い緑の山々が見える。飛行機は右にぐるっと旋回して、いわて花巻空港に着陸した。
盛岡は3度目だ。最初は1987年4月22日、盛岡ターミナルホテルで開催された、岩手日報社主催の肥満セミナーで特別講演「タイコ腹肥満と下半身肥満の差異」を行なった。その時は、一般公募で600名の応募があり、抽選で470名の市民が参加された。
午後2時30分、JR盛岡駅前の"ぴょんぴょん舎"で冷麺を食べた。麺は小麦20%、馬鈴薯でんぷん80%でこしがある。玉子、きゅうり、肉、スイカに、キムチが付いていた。牛ベースのスープが美味しい。岩手県は冷麺の日本での発祥地で、岩手県の中華麺1人当たり消費量は全国一となっている。
午後4時30分から特別講演「肥満治療とインクレチン(GLP‐1)」を行なった。岩手県は肥満・糖尿病が多い。全国45703人の調査で、BMI25以上の人の割合は、男性肥満は51.9%で2位(全国平均38.4%)、女性肥満は23.5%で24位(全国平均23.5%となっている。空腹時血糖126mg/dl以上の人の割合は、男性が15.4%で2位(全国平均8.4%)、女性も7.3%で2位(全国平均4.7%)となっている(徳永他:肥満研究2003)。
座長をされた岩手医大副院長の佐藤譲糖尿病代謝内科教授は「東日本大震災の被災地では、糖尿病が悪化した人が多かった。岩手県の宮古、釜石、大船渡など沿岸部は糖尿病の医師が不足している。盛岡から往復4時間かけて行き、3時間の糖尿病外来診察を行っている。テレビで診察できる医療特区ができれば、あらかじめ採血で出ている血糖、HbA1cなどのデータをテレビを見ながら指導できるようになる」と言われた。
医大新設や医学部定員増が医師不足の根本的な解決法だが、医療特区はすぐに役立つ方法だと思った。中山間(ちゅうさんかん)地域で限界集落が増え、糖尿病など高齢者慢性患者の通院が困難になっている。一方、医療のIT化は進み、CT画像の転送やパソコンの画面で顔を見ながらの会話が可能になっている。
医師法第20条の対面で診療すべきという項目は、かねてから山間僻地や離島の医療の妨げになっていると指摘されている。東日本大震災の復興事業の中で、さまざまな特区が提案されている。中でも医療特区は命と直接かかわるだけに、柔軟な発想で増やしていく必要があるのではないだろうか。