特定健診・保健指導の課題と展望

2011年8月 3日

   2011730日、ホテルグランヴィア大阪で「第7回高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム」が開催された。

 

特別講演Ⅰは東北労災病院勤労者予防センターの宗像正徳指導相談部長による「脈波解析の臨床的意義」で、東日本大震災による宮城県亘理町(わたりちょう)の状況についても述べられた。

宗像部長は「宮城県亘理町では大津波によって255名の死者と11名の行方不明者があり、2749haの田畑のうち1826haが浸水した。ようやく特定健診を開始できるようになった。大災害では恐怖体験・不安・不眠・ストレスから脳・心血管疾患になりやすい。被災地は今後1020年、国全体のサポートを必要としている」と話された。

友人は「福島県の特定健診・保健指導を新潟県が協力して行なうことが検討されている」と言う。隣接する県で協力し合うのが、よいかもしれない。

 

特別講演Ⅱは厚生労働省大臣官房の矢島鉄也技術総括審議官による「特定健診と保健指導の課題」だった。矢島審議官は厚労省生活習慣病室長時代、特定健診・保健指導を立案し実現されている。

矢島審議官は「メタボはウエストだけだと誤解している人がいるが、ウエストに糖尿病や高血圧が加わってメタボになる。人口46万人のA市で国保407270706人を対象とした保健指導で、いい結果が出た。特定健診・保健指導を行なうことによって、年間およそ10億円の医療費が削減されたと推測される」と話された。

 

会場から「特定健診・保健指導は平成25年で終了するのか」という質問が出た。矢島審議官は「510年と継続することを前提としている。A市では、年々増加していた新規の糖尿病性腎症からの透析導入が、保健指導によって横ばいになった」と答えられた。A市の透析患者1人当たり医療費は年間620万円となっている。

先輩医師は「小さな市町村では、A市のような成果を出すのは難しいのではないか」と言われる。日本では地方ほど肥満が多く、大都市ほど肥満が少なくなっている。

 

日本透析学会が全国の4226施設を対象にした調査では、2010年末の透析患者数は297126人となっている。新規透析導入患者数は2009年から2年連続減少し、増え続けていた糖尿病性腎症からの新規透析患者数も1968年調査開始以来、2010年初めて減少している。 

特定健診・保健指導の最大の目的は健康寿命の延伸と医療費削減だ。透析患者の減少は健康寿命の延伸、医療費削減へとつながる。国民栄養調査によると、増加し続けていた男性肥満の頻度も横ばいになっている。メタボ対策という国家的ムーブメントは、徐々に結果を出し始めている。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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