ハンバーガーセットと肥満の医学
「米国をはじめ世界中で肥満が増えたのは、高脂肪・高ショ糖のファーストフードが大きな要因だというのが世界の肥満疫学者のほぼ一致した見解だ」と講演した。
「肥満になる生活として、『何を食べると肥満になりやすいか?』この問いに対して『ハンバーガーセット』と答えることができます」という成宮学先生の言葉(「肥満の医学」日本評論社:池田義雄編2011)を言引用した。
店員「いらっしゃいませ。今日は。御注文をどうぞ」
客「ハンバーガー1つ」
店員「ハンバーガーといっしょに、フライドポテトはいかがですか」
客「ではそれも1つ」
店員「ごいっしょに清涼飲料水などいかがですか。セットになり、お安くなっています」
客「ではオレンジジュースを1つ」
ハンバーガーショップで一生懸命働いている従業員の姿が、よく描かれている。
ハンバーガーは高カロリーの脂肪分の多い肉が使われており、柔らかくて噛む必要が少ない。フライドポテトは高カロリーで、一口サイズで食べやすい。飲料は砂糖などで糖分が多くなる。
会場には池田義雄元慈恵医大教授も来ておられ、「東京に帰ったら、成宮先生に伝えておきますよ」と言われた。後輩の糖尿病専門医は「私も糖尿病の栄養指導の時、ハンバーガーセットのことを言っていますよ」と言う。
講演後、会場の外に出ると管理栄養士の人が待っておられ、「脂を多く含む肉は口に含んだだけで溶け、噛む必要が少なくなります。高カロリーで噛む回数の少ないハンバーガーで、日本の若者に肥満が増加しているのではないかと私も思います」と言われた。
ファーストフードでは1回の平均食事時間が8分27秒、咀嚼回数が562回と、ごはん食の食事時間13分28秒、咀嚼回数1019回に比べ半分程度になっているという報告もある。
清涼飲料水業界は健康のため、ダイエット飲料の低カロリー路線に方向転換しているが、ファーストフード業界は、高カロリーのメガ路線を走りつづけている。
何故なのだろうか?消費者の味覚が変化したのか?高カロリーの脂を好むのは、飢餓の時代を長く生きてきた人間の本能なのか?医学的・社会的にファーストフード問題を解決することは、世界の肥満学者に課せられた責務だと思った。