大阪大学第2内科同窓会と楽しい臨床研究
2012年1月14日、大阪市北区にあるリーガロイヤルホテル光琳の間で「第60回大阪大学第2内科同窓会」が開催された。
60回目となる記念講演は、松澤佑次前教授による「楽しい臨床研究」と、垂井清一郎元教授による「臨床教室のリサーチをめぐる個人的感想」で、ともに臨床研究の話だった。
医学研究には動物や細胞などを用いた基礎研究と、ヒトを対象とした臨床研究がある。阪大2内は伝統的に臨床研究を重視し、1例1例の患者さんから問題点を見つけ病態を解明する患者指向研究をしていた。
松澤名誉教授は「日本の医学基礎論文数は3.3%で世界3位だが、臨床論文数は0.6%で世界18位となっている。日本で臨床研究が衰退したのは、臨床研究が評価されて来なかったことにもよる。新しい治療法を開発するためには、空洞化した臨床研究を活性化させなければならない。臨床研究は人手と時間がかかるが達成感が大きい」と話された。
1980年代、松澤先生の病棟回診はとても楽しいものだった。マイケル・サンデル教授のハーバード白熱教室のように、指導医・研修医もいっしょに活発に議論しアイデアをぶつけあっていた。
その中から、内臓脂肪蓄積は血糖・中性脂肪と関連すること、HDL(善玉) コレステロールは食事のみでは減少し運動を加えると増加すること、肥満者の高尿酸血症は尿酸産生亢進型とされていたが尿酸排泄低下型も多いこと、抗肥満薬ベイスンには糖尿病改善作用もあることなど多くの新しい発見がなされた。当時の病棟は宝の山だった。
写真(左から藤岡滋典君、垂井先生、松澤先生、私)は、1988年6月スウェーデンで開催されたヨーロッパ肥満学会の時、ストックホルム郊外の湖畔で撮影したものだ。
臨床研究は日本ではなかなか評価されず、内臓脂肪型肥満も国際学会で発表したり、英語論文(Fujioka S、Matsuzawa Y、Tokunaga K、Tarui S:Metabolism 1987)を書くことによって評価された。
後輩の大学教授は「臨床研究者は診療や書類書きに追われ、臨床研究をする時間が年々減少している」と言う。
臨床研究は楽しい。日本が国家的戦略で創薬など新しい治療法を開発し、医療を成長産業にするためには、基礎研究とともに臨床研究が不可欠だ。そのためには臨床研究を評価すること、臨床研究者の環境作りをすることが必要だと考える。