山本五十六と大阪大学肥満外来創始者
2012年1月5日午後5時40分から、映画「聯合艦隊司令長官:山本五十六」を観た。
米国ハーバード大学に学んだ山本五十六は、米国が日本の10倍の国力を有することを知っており、軍人でありながら日米開戦に最後まで反対する。役所広司演じる五十六は「世界は広い。この目で、この耳で、この心で世界を感じるんだ」と、玉木宏演じる若い新聞記者に話す。若者に見て欲しい場面だが、観客は高齢夫妻などシニアが圧倒的に多い。
山本五十六は教育にも力を注ぎ、優秀な部下を江田島海軍兵学校の校長にしている。新潟県長岡高校出身の五十六は「戊辰戦争で長岡藩は財政に困窮した時、贈ってもらった米百俵を藩士に分けず、学校を設立した。米百俵は食べればなくなるが、教育に使えば米一万俵、百万俵にもなる」と語る。
つかの間の休日、五十六は団子屋に立ち寄る。日本海海戦で失った左手の人差指・中指を見て、幼い女の子が"おしるこ"を落としてしまう。紙で作ったリボンを髪につけていた少女を見た五十六は、後日きれいな布のリボンを買ってあげる。このシーンは呉市大崎下島御手洗がロケ地となっている。
山本五十六が住んでいた広島県呉市の家は、後に国立呉病院(元海軍病院)院長の官舎になった。元国立呉病院長の石川勝憲先生は呉時代に山本五十六が住んでいた家で生活されていた。実際に住んでみると老朽化しており、雨漏りがするなど大変だったそうだ。
大阪大学第2内科肥満外来は、1963年石川勝憲先生によって創設された。1978年阪大2内脂質研に入った私は、石川先生のもとで肥満研究をした。石川先生の口癖は「ガムシャラにやれ!ガムシャラに」「馬鹿になれ!馬鹿に」だった。
スティーブ・ジョブズが2005年米国スタンフォード大学で行なった演説での言葉「Stay hungry! Stay foolish!」に似ている。どんなことも馬鹿になってやりつづけると、いつか実を結ぶということなのか。
山本五十六と石川先生の共通点は、ともに自然の厳しい雪国で育ったことだ。山本五十六は豪雪地帯の長岡高校出身で、後輩には櫻井よしこらがいる。石川先生も島根県邇摩高校出身だ。雪国の厳しい自然が、芯の強さや忍耐力を鍛えるのかもしれない。
石川先生も研修医の教育に力を注がれていた。石川先生が国立呉病院を退官される時、薫陶を受けた教え子たちが366ページにおよぶ退官記念誌「夢と実行:呉での八千八日」を出版している。
資源の乏しい日本は、教育・勤勉さによって繁栄を築いてきた。学びの意欲・勤労の意欲が失われようとしている。今の日本にとって、教育・人材育成こそが日本の将来にとって、最大の投資になるのではないだろうか。