税と社会保障の一体改革と国民負担率
2012年1月23日、JR大阪駅に隣接したホテルグランヴィア大阪鳳凰の間で「第49回大阪産業医学研究会」が開催され、100名が出席した。
特別講演はICRP(国際放射線防護委員会)の委員をされていた中村仁信大阪大学放射線科名誉教授による「低線量放射線の発がんリスク」だった。
「放射線被ばくすると活性酸素ができDNAを傷つけがんになる。マウスや人間の体には修復能力があり、慢性の低線量被ばくは抗酸化機能・DNA損傷修復能を高め、がんになりにくくする。放射線には"しきい値"があり、低線量放射線は怖くない。福島県伊達市で講演をしたら、お母さんたちは安心され喜んでおられた」と話された。福島の人たちは勇気づけられ、希望を持たれたことだろう。
懇親会で名誉会長が「ウォシュレットのある国は、世界中で日本だけだ。日本はまだ恵まれている」と挨拶された。皆保険制度は、日本経済繁栄の上に成り立っている。日本の物質的な豊かさは、いつまでつづくのだろうか。
先週、フランス料理を食べながら「今後の日本経済」について議論した。新聞社経済部長は「このままでは7年後、ギリシャのように財政破たんするかもしれない」と悲観的だ。
銀行OBは「40兆円の収入・90兆円の支出で国が持つわけはない。外資系ファンドは今ヨーロッパに向かっているが、次は日本を狙っている。日本には800兆円もの赤字国債があり、外資系がしかけてきて国債の金利が1%上がると、800兆円×0.01=8兆円の税金が使われてしまう。赤字国債も減らしていかなくてはならない」と憤る。
現在、日本の国民負担率(税金・保険料/国民総所得)は39%となっている。小さな政府のアメリカで32%、イギリス・ドイツは50%、大きな政府の北欧では60%となっている。
財務省OBは「海外に資産がある間は、大丈夫だ。高福祉にするには、高負担になる。低福祉・低負担、中福祉・中負担、高福祉・高負担、どれにするかは役人が決めることでも、国会議員が決めることでもなく、国民が決めることだ」と意気込んだ。
"部分最適"で考えると、年金・子ども手当は多い方がいいし、所得税・消費税・法人税は少ない方がいい。部分的には正しいことでも、全体的に考えると間違った方向に行くことは多い。視野を広く持ち、全体を見て判断する"全体最適"が必要だ。
「税と社会保障の一体改革」は"木を見て森を見ず"ではなく、"森を見た上で、木を見る"考え方がいいだろう。国民負担率をどれだけにするか、国民が覚悟を持って決めなくてはならない時期に来ているのではないだろうか。