麒麟の翼と人口減少社会
2012年1月30日、東野圭吾原作の映画「麒麟の翼ー劇場版・新参者」を観に行った。
午後6時、封切り3日目の映画館内のほとんどは中年カップルと若いカップルだ。事件は東京日本橋にある麒麟像の下で、青柳武明(中井貴一)が息絶える所から始まる。日本橋署の刑事・加賀恭一郎(阿部寛)が、人間の心の奥にまで踏み込んで謎を読み解いていく。
容疑者の恋人・中原香織(新垣結衣)は、お腹の子を一人では育てることはできないと出産を一旦あきらめる。加賀恭一郎らの説得で子供を生み育てる決心をした時、観客の多くは安堵したことだろう。
午後9時、帰宅すると夕刊一面に「50年後総人口8674万人:厚労省推計」のタイトルで記事が載っていた。厚労省社会保障審議会は、合計特殊出生率が1.35になると仮定した新たな人口推計を発表した。少子化により人口減少が加速し、50年後に8674万人まで減るという。50年間で総人口が4132万人減ることになる。
昨年12月、合計特殊出生率が2.42と全国一高い鹿児島県徳之島伊仙町の大久保明町長に会って話をした。大久保町長は鹿児島大学医学部を卒業、徳之島徳州会病院長を経て、伊仙町長になられている。
出生率が高いのは何故かと聞くと、大久保町長は「子供の多い家庭には近所の人が食べ物を持って行くなど、地域で協力して子供を育てている。子だくさんの家庭は、若いうちに結婚し子供を産んでいる」と答えられた。
子供を育てるのは楽しい。貧しくても子は育つ。写真は米国USC時代に、アムトラックで家族旅行をした時のものだ。当時は年収も少なく、散髪も2年に1度しか行かなかった。家計簿をつけて生活する毎日だったが、私にとって最も幸せな時代だった。
日本の出生率低下は、日本人の晩婚化と大いに関係がありそうだ。2010年の平均結婚年齢は男性30.5歳、女性28.8歳、出生率は1.39となっている。結婚適齢期は社会状況によって変動するが、母子ともに安全に出産できる"出産適齢期"は有史以来変わっていない。このギャップが日本の少子化の大きな要因になっているのではないだろうか。
女性が社会進出している国は、成熟した国だともいえる。女性の社会進出と出生率の増加、この二つを共存させるには、どのような策を講ずればよいか。ジレンマが私の頭を悩ませる。