沖縄クライシスと学校給食のあり方
2012年3月8日、兵庫県西宮市ノボテル甲子園で「第13回阪神生活習慣病研究会」が開催された。
琉球大学の益崎裕章第2内科教授による「沖縄における肥満症・糖尿病研究と新たな医学応用」の特別講演があり、私が座長をした。
益崎教授は「沖縄の肥満は男女とも全国1位、糖尿病の有病率も最近まで1位と、メタボ・ワースト県となっている。沖縄は世界に冠たる長寿県だったが、2000年の調査で男性の平均寿命が全国26位に急降下し、"沖縄クライシス""26ショック"などと呼ばれている。平均寿命が低下したのは、40・50代での心筋梗塞・脳梗塞が急増したことによる。
沖縄へのファーストフードの上陸が、本土に比べ20年先行したことが大きい。高脂肪食の過剰摂取・肉食への高い嗜好性と野菜摂取不足・自動車の普及・わずかな気温日内変化などが要因となっている。
沖縄は一方で、100歳を超える人が今でも多い。沖縄古来の食生活に、長寿の秘訣があるかもしれない。長寿の人達の中には、沖縄伝統の玄米ドリンクを飲んでいる人がいる。玄米は、過食となる食行動を変化させ、膵リパーゼ活性を阻害し、脂肪排泄が増加することによって肥満を防ぐ」と話された。
沖縄の小児肥満・学校給食について質問すると、益崎教授は「沖縄では小児肥満も多く、学童・高校生の2型糖尿病が急増している。沖縄の給食はボリュームがあり、給食で太ったという大学生がいる」と答えられた。
3月9日、大阪府T市の父兄の方が「今の給食はパンだけでなく、ご飯や魚やみそ汁も出していますよ」と、"T市3月分学校給食献立表"を持って来られた。A3用紙の表には、14日分の給食メニュー・材料・エネルギー・蛋白質・脂肪・塩分が、A3の裏には"給食に登場した郷土料理"が載っていた。
14日のうち、ご飯もの7日(五目ずし、桜えびご飯、豚キムチご飯、赤飯、ご飯、麦ご飯2回)、パン6日、スパゲッティ1日となっている。毎日、コッペパンに脱脂粉乳だった昭和30年代に比べ、献立が豊富で栄養バランスもいい。
豚肉は10日あるのに、魚が2日(さわら素焼き、ほっけいしる干し)しかない理由を聞くと、「魚の骨が刺さるのを先生が心配したり、魚を食べない子の親がクレームをつけたりするからではないか」という。骨のある魚の食べ方を、親は幼少期に教える必要がありそうだ。骨のない魚を給食に使うのもよいかもしれない。
沖縄では、小児期から肥満・糖尿病が増加、働き盛り世代の冠動脈疾患が深刻化し、沖縄クライシスが起きている。これからの学校給食は、子供たちの将来のため、沖縄クライシスの教訓を活かしてもらいたい。