沖縄クライシスと学校給食のあり方

2012年3月14日

    201238日、兵庫県西宮市ノボテル甲子園で「第13回阪神生活習慣病研究会」が開催された。

琉球大学の益崎裕章第2内科教授による「沖縄における肥満症・糖尿病研究と新たな医学応用」の特別講演があり、私が座長をした。

 

益崎教授は「沖縄の肥満は男女とも全国1位、糖尿病の有病率も最近まで1位と、メタボ・ワースト県となっている。沖縄は世界に冠たる長寿県だったが、2000年の調査で男性の平均寿命が全国26位に急降下し、"沖縄クライシス""26ショック"などと呼ばれている。平均寿命が低下したのは、4050代での心筋梗塞・脳梗塞が急増したことによる。

沖縄へのファーストフードの上陸が、本土に比べ20年先行したことが大きい。高脂肪食の過剰摂取・肉食への高い嗜好性と野菜摂取不足・自動車の普及・わずかな気温日内変化などが要因となっている。

沖縄は一方で、100歳を超える人が今でも多い。沖縄古来の食生活に、長寿の秘訣があるかもしれない。長寿の人達の中には、沖縄伝統の玄米ドリンクを飲んでいる人がいる。玄米は、過食となる食行動を変化させ、膵リパーゼ活性を阻害し、脂肪排泄が増加することによって肥満を防ぐ」と話された。

 

沖縄の小児肥満・学校給食について質問すると、益崎教授は「沖縄では小児肥満も多く、学童・高校生の2型糖尿病が急増している。沖縄の給食はボリュームがあり、給食で太ったという大学生がいる」と答えられた。

 

39日、大阪府T市の父兄の方が「今の給食はパンだけでなく、ご飯や魚やみそ汁も出していますよ」と、"T3月分学校給食献立表"を持って来られた。A3用紙の表には、14日分の給食メニュー・材料・エネルギー・蛋白質・脂肪・塩分が、A3の裏には"給食に登場した郷土料理"が載っていた。

14日のうち、ご飯もの7日(五目ずし、桜えびご飯、豚キムチご飯、赤飯、ご飯、麦ご飯2回)、パン6日、スパゲッティ1日となっている。毎日、コッペパンに脱脂粉乳だった昭和30年代に比べ、献立が豊富で栄養バランスもいい。

豚肉は10日あるのに、魚が2日(さわら素焼き、ほっけいしる干し)しかない理由を聞くと、「魚の骨が刺さるのを先生が心配したり、魚を食べない子の親がクレームをつけたりするからではないか」という。骨のある魚の食べ方を、親は幼少期に教える必要がありそうだ。骨のない魚を給食に使うのもよいかもしれない。

 

沖縄では、小児期から肥満・糖尿病が増加、働き盛り世代の冠動脈疾患が深刻化し、沖縄クライシスが起きている。これからの学校給食は、子供たちの将来のため、沖縄クライシスの教訓を活かしてもらいたい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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