宇治平等院の食・桜と薫の君
2012年4月1日、京都府宇治市にある世界遺産「平等院」に行った。
午前9時45分自宅を出発、中国道・名神・京滋道を通り宇治に着いた。宇治に来るのは5度目だ(メタボ教室第172段「源氏物語」)。宇治駐車場から、宇治川沿いの"あじろぎの道"に出た。
今年の開花は遅れ、道沿いや中の島の桜は、まだ蕾だ。右手に喜撰橋・十三重石塔が、左に中の島にかかる橘橋、その向こうに宇治橋が見え、緑色をしたJR京都線の列車が走っていく。平等院表参道に入ると、"日本かおり風景100選の道"というだけあって、ほうじ茶の香りが漂ってきた。
午前11時30分、平等院表参道にある京都の友人お勧めの「京料理竹林」で、"あさぎり御膳"を食べた。掘り炬燵の和室で、障子を開けると庭の向こうに桜の木が見える。最初に宇治抹茶の豆腐が出てきた。若草色の和服を着た女性が食事を運んでくると、平安時代にタイムスリップしたようだ。
湯葉しんじょうのすまし汁は、筍や木の芽があり美味しい。二段重箱は刺身・天ぷら・煮物・焼き物で、菜の花・蕗・みょうがの季節ものが入っていた。筍の炊き込みご飯で、デザートは自家製の抹茶生麩饅頭と抹茶蕨餅だった。京料理は四季が育む旬の素材が用いられ、やさしい味がする。
平等院の表門から入ると直ぐの所に藤棚があった。5月上旬が見頃だという。鳳翔館には、1万円札の図柄になっている鳳凰1対(国宝)が飾ってあった。
表参道は土産物屋が立ち並び、あちこちから外国語が聞こえてくる。海外からの観光客も戻ってきたようだ。宇治橋西詰めに"紫式部の像"があり、その前で若者や外国人が順に記念写真を撮っていた。
式部像の隣に、源氏物語54帖「夢浮橋」の碑があった。宇治橋から歩いてすぐ南にある45帖「橋姫」神社に行った。宇治十帖(源氏物語45~54帖)は、薫の君が匂宮と宇治八の宮の三姉妹(大君、中君、浮舟)をめぐって織り成す恋物語で、薫の君20歳から28歳までを描いている。
宇治に最初に来たのは21歳、大学3年の1970年10月18日(写真)で、柿の季節だった。青春時代の20代の頃、人生は長いと思っていたが、60代になると短いと感じる。
宇治の街は1000年の時を経てなお、源氏物語の雅の世界が残っている。薫の君が歩いたであろう道を、四季を感じながら散策すると、きっと楽しい一時を過ごせることだろう。