平安神宮の桜と終末期医療
2012年4月13~15日、京都平安神宮前の「みやこめっせ」で第109回日本内科学会(中尾一和会長)が開催された。
4月14日、名神高速道で京都に行った。東寺あたりは道に桜の花びらが散り、桜の花びらで覆われた車も走っていた。平安神宮付近の桜は満開で、大勢の人で賑わっていた。
午後2時20分から、パネルディスカッション「内科学の使命と挑戦」があり、2500名が参加した。
最初の演者は100歳になられる聖路加国際病院の日野原重明理事長で、座長の松澤佑次阪大名誉教授は「日野原先生は、日本人の全てに元気を与えられている」と紹介された。日野原医師は「ターミナルケアでは、QOL(生活の質)を高めることが最も大切だ。死の間際でも痛みを少なくしてあげるとよい」と話された。
先端医療振興財団の井村裕夫理事長は「高齢化と高度医療で医療費は年々増加し、2010年の37.5兆円から、このままでは2015年42.3兆円、2025年52.3兆円、2035年65兆円になると予測される。少子高齢社会で支える人が少なくなり、医療も変わっていかざるをえなくなっている。これからの医療は、生存期間の延長より、QOLが重視されるようになるだろう。
薬や医療技術の開発も、単によくなるかどうかだけでなく、費用対効果も考える必要がある。早期発見・早期治療の時代から、メタボリックシンドローム対策など一次予防の時代になっている。個々の遺伝子を調べ、その人がなりそうな疾患を予防する先制医療を行うと、さらに健康寿命を延ばし医療費を削減することができる」と話された。
野の花診療所の徳永進所長は「終末期医療は命の長さに価値を置くのではなく、患者の痛みを和らげ、人生を振り返り、死を受容できるようにするとよい。病院は満床、施設も満床、家庭は空床になっている。在宅医療の技術は最近、急速に進歩しており、病院医療から在宅医療・在宅ケアに移行していくだろう。胃ろう(ペグPEG:胃に皮膚から直接チューブを入れ栄養を補給する治療)の適応も慎重に考える必要がある」と話された。
4月16日午後6時、伊丹昆陽池公園では桜吹雪が舞い、半分葉桜になっていた。病院勤務の後輩医師は「がんの末期で意識がなく治る見込みがない人でも、いったん気管挿管をしたら、はずすと罪になる。法律を改正するなど、社会全体で終末期医療を考えていかなければならない」と言う。
人には、それぞれが望む生き方・老い方がある。日本の終末期医療は、少しでも長く延命させることが最優先されてきた。患者と家族の意向を尊重する終末期医療が行なわれる日は、近いかもしれない。