大阪大学第2内科同窓会と自治体病院・医療訴訟
2013年1月12日、大阪市北区にあるリーガロイヤルホテル大阪で「第61回大阪大学第2内科同窓会」が開催された。
午後4時30分から、黒川正典市立池田病院総長による特別講演「自治体病院の現状と今後の展望ー市民病院27年間勤務からの一考察」があった。黒川先生は阪大2内の4年先輩で、全国公立病院連盟会長をされている。
「自治体病院は2000年の772病院から、2011年は683病院に減少している。2010年44.3%の自治体病院が赤字で、職員給与費比率は58.1%(民間50.0%)と高い。大阪府下16の市立病院のうち、13病院が赤字となっている」と話された。
午後7時から、懇親会があった。公立病院勤務の後輩医師は、「給与費比率を下げるため、常勤医を減らしている。常勤医が減ると、勤務医の負担が増える」と訴える。総務省公立病院改革ガイドラインでは、経常収支比率100%以上、病床利用率80%以上、給与費比率52%以下を目標としている。
私は、「常勤医を減らすことによって、給与費比率を下げるというのはおかしい。勤務医の過重労働を、これ以上増やすべきではない。民間病院などを参考にして、他の方法で給与費比率を下げるべきだ」とアドバイスした。
自治体病院の医師不足は深刻だ。特に、訴訟リスクの高い産科医、外科医、小児科医の不足が目立つ。刑事事件になって、長期間の取り調べになると、勤務医の精神的負担は大きい。
3年前から、法曹関係の委員会の委員に推薦され、これまで20回以上、会議に出席している。メンバーは司法関係者に加え、法学部長・大学教授・会社役員・ベンチャー社長・新聞社論説委員・メディア社会部長・NPO法人代表・市民団体代表と多士済々だ。
医療裁判では自治体病院が被告になっていることも多い。昨年6月、委員会で私は、「裁判の結果は、社会に大きな影響を及ぼす。産科医不足は、福島県立大野病院事件で、産科医が逮捕されたことが要因の一つとなっている。今の医療裁判では、裁かれてはいけない人が裁かれたり、逆に裁かれるべき医師が裁かれていないケースがある。医療に詳しい人も、裁判官に任官した方がよい」と発言した。
委員の方に「先生のような司法に関心を持っておられるお医者さんは稀だ。これからも、委員をつづけて下さい」と言われた。私のような司法に関心を持ち、時間的に余裕のある医師は、稀有な存在なのだろう。
司法は想像していた以上に、政治・社会・人権・宗教・医療・国際経済など幅広い分野に影響を及ぼしている。自治体病院の勤務医不足・過重労働改善には、立法・行政・司法に医学的知識を持つ人の力が必要だ。