雪の塩釜島めぐりと食塩摂取量1日6gは困難か可能か

2013年2月 2日

    2013126日午前、仙台トラストタワーで、総合健診医学会コントロバーシー「食塩摂取量16gは達成できるか」があり、日本大学総合健診センター高橋敦彦医長が「困難である」立場から、青森県立大学吉池信男教授が「可能である」立場から話された。

 

高血圧治療ガイドライン2009の減塩目標値は6g/日未満で、2011年の平均食塩摂取量は男性11.4g、女性9.6gとなっている。自分で調節できる醤油・味噌・食塩は40%と少なく、自分では調節できない加工食品・外食由来の食塩は60%と多い。

 

「健康日本21では、減塩目標値を男女とも8gにしている。6gにした根拠は何か」の質問に、「6gまで食塩1g減らすごとに、血圧は1mmHg下がる。6g以下でのエビデンスはない」と答えられた。

「何年後に食塩6gが可能になるか」の質問には、「味覚が慣れるよう、1020%の減塩を、何年かごとに繰り返すので、早くて20年後可能になる」と答えられた。

 「個人が努力しても実現は不可能だ。国・社会・食品産業・外食産業の協力が不可欠だ」、「食塩感受性の人は4割で、それ以外の6割の人に減塩しても意味がないのではないか」、「塩分摂取量はエネルギー摂取量に比例する。6gに当たるエネルギー量は1000kcalで、6gを達成している人は、まともに食べていない高齢女性が多いのではないか」など、フロア・座長からの質問・コメントが相次いだ。

 

管理栄養士の人たちに聞くと「うす味にすると商品が売れなくなるので、食品会社は塩分を減らさないのではないか」、「塩分を減らしすぎても、寿命が短くなるという報告がある。男性では9.0g、女性では7.5gで減塩指導をしている」と言う。

 

午後、仙台から多賀城市を通り、塩釜市に行った。塩釜漁港は生まぐろ水揚げ高日本一で、寿司の街となっている。JR本塩釜駅周辺を散策した。地震で家が全壊し、プレハブやさら地になった所が多い。

 凍った雪道で、皮靴で歩くと転倒しそうだ。マリンゲート塩釜に行き、"島めぐり芭蕉コース"80分に乗った。甲板は雪と風で、凍てつくように寒い。100羽近いカモメが、白い翼を広げて飛んで行く。

松島には260の島があり、4つの島に900人が住んでいる。12メートルの津波が襲い、8割が全壊・半壊になったが、島の人は土地に愛着があり、大部分の人は今も島の仮設に住んでいるという。島の人たちは、牡蠣や海苔の養殖で生計を立てている。

 

日本は減塩後進国で、さらなる減塩を要する。食塩16gになると、伝統的な日本食は失われるかもしれない。健康寿命を延ばす食塩摂取量は何gか?日本人のデータを用いた総合的見地からの目標設定が必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について