映画「トラと漂流した227日」と広州の肥満
2013年2月5日、3D映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」を観に行った。
午後6時、レディースデイ1000円とあってか、館内の8割は中高年女性だった。ヤン・マーテルのベストセラー小説「パイの物語」を、太極拳の使い手アン・リー監督が映画化したもので、アカデミー賞11部門にノミネートされている。
インドで動物園を経営していた一家が、日本船でカナダに移住する途中、太平洋で遭難する。たった一人生き残った16歳の少年パイが、ベンガルトラと同じ船で漂流する物語だ。虎は少年の命を奪うのか、命を与えるのか。
衝撃的なラストは、"一つの出来事でも、多様な見方がある"という黒澤明監督作品"羅生門"に通じる所がある(メタボ教室第93段「明日のゲーム」)。
2月7日、中国南部にある広州市在住の人と話をした。「肥満、特に子どもの肥満が増えている。ハンバーガー、フライドチキンのチェーン店の進出がつづいている。肥満が増えた原因は、中国人の食生活が、薬膳・お茶から、ファーストフードに変化したからだろう。昼食は150円ぐらいで、日本食は高くカツ丼は800円する」と言われた。
広州に8年前行った時、350円でスター・ウォーズを観て映画館を出ると、前の道端で最新映画のDVDが100円で売られていた(メタボ教室第150段「くいだおれ人形」)。
海賊版DVDはどうなっているか聞くと、「映画が封切られた翌日には、人の頭が映ったDVDを売っている。ソニーやパナソニックの製品はブロックがかかっているので、海賊版DVDを見ることができない。世界の大手電器メーカーの中には、ブロックをはずしている所もある」と答えられた。
消費者のニーズを優先させるか、モラルを優先させるか、多様な価値観がある。デフレ下の日本における外食産業の価格破壊と同じ構図だ。
また、「広州では、インターネットで大阪のテレビ2、4、6・・チャンネルを7日前までさかのぼって見ることができる。政治的な所は、たまに画面が乱れることがあるが、東京のテレビもみな、1週間前からのものを見ることができる。中国のテレビと日本のテレビでは、内容があまりにも違いすぎる」と話された。
広州市の一般家庭では、日本のテレビをネットでリアルタイムに見ることができるのに対し、日本の一般家庭ではCNN(米国)とBBC(英国)ぐらいしか見ることができない。日本に入る中国の情報は、あまりにも少ない。
中国広州でも、食のファーストフード化によって伝統食が失われ、肥満が増えている。美味しさ・売上げのみを求めた商品を提供するか、カロリー・栄養も考慮した商品を提供するか。私は後者を選びたい。