東京家族と上海の肥満・大気汚染
2013年2月12日、山田洋次監督50周年記念映画「東京家族」を観に行った。
午後5時50分、館内は中高年夫婦が多い。広島県に住む父母が、東京で暮らす子供たちに会いに行く話で、小津安二郎監督の名作「東京物語」(1953年)をモチーフにしている。新幹線ができて尾道では近すぎるため、舞台は大崎上島に変わり、段々畑の上にある民家・木江の古い町並み・天満港がロケ地となっている。
次男・昌次(妻夫木聡)が母・とみこ(吉行和子)に語りかけるシーン、次男の恋人・紀子(蒼井優)が父・周吉(橋爪功)と話すシーンでは、感情移入して思わず涙が出た。
昌次が父母と天井のない"はとバス"に乗って、秋葉原や東京スカイツリーを巡るシーンがあった。私も父と"はとバス"に乗り、銀座や東京タワーを巡った(メタボ教室第138段「東京タワーと父」)。1963年3月のことで、広島県から東京まで、夜行列車で17時間かかった。川崎球場にも行ったが、当時の日本は高度成長期で大気汚染がひどかった。
1か月前から、日本のテレビは連日、中国の大気汚染PM2.5(2.5μm以下の微小粒子状物質)について、大々的に報じている。
上海在住の人と話をした。「上海に住むと肥満になる人が多い。油っこい中華料理を食べ、濃い酒を飲むからだろう。大気汚染でジョギングができず、ジムに通っている。北京の大気汚染の方がすごい」と言われた。
2011年10月、香港で環境問題のシンポジウムがあった(メタボ教室第383段「環境問題」)。中国の大気汚染について、香港大学教授は「香港島の中心街・中環(セントラル)で40年間、大気汚染の定点観測をしている。年々、大気汚染がひどくなっており、気管支喘息・肺がんなどの呼吸器疾患、循環器疾患、妊婦への影響が心配だ」と熱く語られた。
中国の大気汚染に関心を持つ日本人は少なく、出席者150人のうち、アメリカ人60人、中国人60人、日本人は私を含め3人しかいなかった。帰国してすぐマスコミの人に「中国の大気汚染が、深刻になっている」と伝えたが、全く興味を示されなかった。
大手繊維メーカーの人に話すと、既に中国の大気汚染をよく知っておられ、詳しい分析をされていて、「中国の黄砂には大気汚染物質だけでなく、微生物が付着している。黄砂に付着した汚染物質や微生物が、喘息などアレルギー反応を起こしている可能性がある。微生物を防ぐマスクを開発中だ」と言われた。
大気汚染物質に国境はない。中国の大気汚染は他人事ではなく、日本にも影響する。大気汚染対策の進んでいる日本の民間企業は、中国の専門家と協力して、大気汚染問題を解決するとよいと思った。