近松公園の梅の花と医師不足・地域偏在
2013年3月13日午後6時、大阪市北区で異業種の会があった。
隣の席は初対面の弁護士の人だった。法科大学院ができて弁護士数が急激に増え、資格を取っても就職できない人がいるという。「医療訴訟をたくさん扱っていて、医師と接する機会が多い。同志社が医学部新設を計画しているが、京都府医師会が反対しているのはどうしてか」と問われた。
私は「京都、大阪は満杯だ。兵庫県も神戸、阪神間は満杯になっているが、兵庫県の山間部、日本海側はガラガラだ。兵庫県は人口当たりの医師数が西日本で最も少なく、西日本に作るなら豊岡がいい。
それより、人口当たりの医師数が西日本に比べ圧倒的に少ない東日本の東北・北海道に新設したらいい。会津若松だと、福島復興のシンボルにもなる。関関同立など私立名門校が手を挙げてくれると、国も喜ぶだろう」と答えた。
兵庫県の医師数が少ない要因は、兵庫県の人口は557万人なのに医学部は神戸大と兵庫医大の2校しかないためだ。京都府は人口263万人で京大・京都府立医大の2校ある。大阪府は人口886万人で阪大・大阪市大・大阪医大・関西医大・近畿大学の5校ある。
3月16日午後3時、尼崎市にある近松公園に行った。雲一つない青空で、14.5℃と吹く風が心地よい。土曜日とあってか、少年たちがキャッチボールやボール蹴りをして遊んでいる。近松公園には鳥が多い。2羽の小鳥がキーキーと鳴き、クスノキには大きな鳥が10羽止まっていた。
公園には春を告げる梅の花が、紅やピンク色に咲いていた。「東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな(拾遺和歌集)」。大宰府に左遷される菅原道真が、都を去るにあたって詠んだ歌だ。好きだった庭の梅の花に、別れを告げている。
友人は「厚労省が医師不足になった元凶のように思われているが、そうではない。厚労省の吉村仁保険局長が1983年に出した『医療費亡国論』が、医師過剰になることを恐れた勢力に利用された。高齢化・医療の高度化が進み、医師不足になっていることに気付いたが、医師が少ないことは医療費抑制につながるので、そのままにしていた。もっと早く方針を見直すべきだったかもしれない」と言う。
必要医師数は2025年にピークを迎え、新設医学部を作り過ぎても、将来、医師過剰になる恐れがある。新設医学部は将来の人口構成などを考え、適切な地域に適切な数を認めることが必要だ。
医師不足、地域偏在はつづいている。医師不足かどうかは、都の一部の人達により判断されてきた。過疎地の医師不足は深刻で、医師が増えることを望んでいる。過疎地に医療の春が訪れるのはいつの日のことか。