大阪大学内分泌代謝内科同窓会とSACLA・京
2013年4月6日、満開だった伊丹市にある金岡川沿いの桜は、台風並みの"春の嵐"で葉桜となった。
午後4時30分、リーガロイヤルホテル大阪で、大阪大学内分泌代謝内科同窓会があり、200名が出席した。同窓会には、北は北海道の旭川医大から、南は九州の久留米医大まで22名の教授がおり、肥満・糖尿病・脂質代謝での団結力は強い。
特別講演は池上博司近畿大学内分泌代謝糖尿病内科教授による「糖尿病の遺伝:1型、2型、そして・・・」だった。池上教授の専門は糖尿病の遺伝子で、「1型糖尿病と2型糖尿病には共通した遺伝子と、別個の遺伝子がある」と話された。糖尿病の遺伝子素因は複数から成り、治療まで結びつくのは遠そうだ。
「関西イノベーション国際戦略総合特区」で重点的に取り組む6つの分野のうち、医療は医薬品、医療機器、先端医療技術(再生医療など)、先制医療の4分野を占める。5年後、2兆1509億円の経済効果と、新たな雇用7万2230人が見込まれている。
医療のイノベーションは最先端の技術から生まれることが多い。関西には、世界最大の出力を誇る大型放射光施設「Spring-8」、それに隣接して建設されたX線自由電子レーザー施設「SACLA」、スーパーコンピュータ「京」がある。Spring-8の最大加速エネルギーは、米国の10倍、ヨーロッパの100倍に達する。
SACLAは2007年6月着工され、日立造船(安藤重寿会長)や三菱重工業、竹中工務店など330社の技術の粋を結集して創られ、2012年3月から共用開始されている。
SACLAは長さ400mの加速器棟、240mの光源棟、60mの実験研究棟からなる。コンクリート床面を平面差50μm(髪の毛は100μm)以内にするため、新たに研削する装置も開発された。これだけの施設は、土木・建築・電子・電器と超一流会社がそろった日本でしかできない。
SACLAにより、1フェムト(1000兆分の1)秒単位で、原子や分子の瞬間的動きの観察が可能となった。原子や分子の配列、電子の動きを直接観察できれば、難病の原因解明や薬の創出に役立つ。
スーパーコンピュータ"京"により、1秒間に10ペタ(1000兆の10倍)回の計算が可能になっている。"京"は2012年9月から共用開始されている。SACLAと"京"を使えば、これまで考えもつかなかったような新たな研究ができるかもしれない。新たな技術は、ブレイクスルーを起こすチャンスだ。
内臓脂肪型肥満は1980年、大阪大学で当時最先端のCTスキャンを用いて見出され、世界に発信された。関西にあるSACLA・京など最先端の技術を用いて、関西から新たな成果が世界に発信されることを期待する。