大阪大学循環器内科同窓会と佐藤一斎
2013年6月15日、リーガロイヤルホテル大阪で「大阪大学循環器内科同窓会」が開催され、160名が出席した。
午後5時30分、会長の小室一成教授が「100名の医局員がおり、英語論文が95編出た。iPS細胞の循環器分野を研究する5つの大学に、大阪大学が入った。この1年で山下静也大阪大学総合地域医療学教授ら4人の教授が誕生した」と挨拶された。山下教授(写真 表示左端)とは長年、阪大2内循環器脂質研究室で一緒だった。
特別講演は日本医科大学の水野杏一循環器内科教授による「Seeing is Believing(百聞は一見にしかず)」だった。水野教授は冠動脈内視鏡の先駆者で、冠状動脈のプラーク・血栓などの動脈硬化性病変を、内視鏡で直接観察されている。冠動脈は血液で満たされているため、胃や大腸の内視鏡と異なり難しい。
座長からの「NEJMやランセット(超一流医学雑誌)に、数多くの論文を載せておられるが、秘訣は何か」という問いに対し、水野教授は「これまで誰もしたことのないことをやってきた。それと、目的を持つことだ。私の場合、木のてっぺんまで行くことはできなかったが、幹の部分が太くなり、枝の部分にたくさんの実がなった」と答えられた。
午後7時、懇親会があった。小室一成教授は高校時代、全国模試で1位になったことがあるという。日本肥満学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会にも高校時代、全国模試でトップになった人がいる。医学会に学力優秀な人が集まっているにもかかわらず、日本の医療は世界に進出していない。日本では産学連携の環境が整っていない、臨床治験を行うことが難しい、医療機器・薬剤の許認可が遅い、・・など"日本の医療のしくみ"に問題がありそうだ。
乾杯の音頭を、阿部裕阪大名誉教授がとられた。阿部先生は、私の29年先輩になる。「幕末の陽明学者に佐藤一斎がいる。佐藤一斎は岐阜県の出身で、東京に出て山田方谷、佐久間象山など一気に3000人の門下生ができた。小室先生と阪大循環器内科の今後益々の発展を願って乾杯」と発声された。
佐藤一斎といえば"言志四録"を思い出す。「少くして学べば、則ち壮にして為すことあり。壮にして学べば、則ち老いて衰えず。老いて学べば、則ち死して朽ちず」という有名な言葉がある。
若いときに学べば、壮年になったときに意義のあることができる。壮年になってから学べば、老年になっても頭がぼけることはない。老年になってから学んでも遅くはない。後につづく人が見ていて、命がなくなった後も人々の心の中に残り、朽ちることはない。学ぶことは、時を選ばない。いつから始めてもよいのだ。