「肥満・糖尿病診療を10倍楽しむ方法」と臨床・研究・教育
2013年11月30日、大阪市北区にあるハービスPLAZAで「第65回大阪大学内分泌代謝研究会」が開催された。
午後3時から一般演題が9題あり、特別講演は住友病院の山田祐也内分泌代謝内科主任部長による「内分泌代謝診療を10倍楽しむ方法」だった。山田先生は阪大2内の7年後輩で、医師9人(後期研修医含む)で内分泌代謝診療を行っているという。
山田祐也先生は「内分泌代謝診療は外来・救急・当直・入院・研究・教育とある。全てが楽しいはずはないが、全てが嫌では続けられない。治療で病気が改善したとき、ちょっとした発見をしたとき、心が通じ合ったとき、周囲に認められたときなどに嬉しさを感じる。
患者さんが治癒し結婚式に招かれた時、救急外来で来た稀な疾患を英文で発表し褒められた時、指導した研修医が英文で症例報告を書いた時、アディポネクチンの測定で新たな発見をした時、などに大きな喜びを感じた」と話された。
人に感謝されると嬉しいものだ。私は市立伊丹病院時代、肥満患者会と糖尿病患者会の合同で、"伊丹歴史探訪"などウォークラリーをしていた。伊丹郷町の旧岡田屋を出発し、酒蔵などを見学、黒田官兵衛が1年間幽閉されていた有岡城まで歩いた。患者会には脚が不自由で外出できない方も多く、患者さんは甲子園大学の学生らボランティアに車椅子を押してもらい喜ばれていた。
肥満の研究ではCTスキャンで内臓脂肪を発見した時、肥満の教育では10人の学位論文を指導して完成させた時など楽しかった。
午後6時からの懇親会で、垂井清一郎阪大名誉教授(写真
表示左)と話をした。1週間前の第50回日本糖尿病学会近畿地方会では、50周年記念講演「糖化(グリケーション)の生物化学」をされ、大勢の垂井門下生が聴きに来られていた。
大阪大学の肥満外来も、1963年に開設されてから丁度50年になる。創始者の石川勝憲先生(メタボ教室第399段「大阪大学肥満外来」)は、阪大2内循環器脂質研究室のチーフ、国立呉病院院長をされ、研修医の教育に熱心だった。石川勝憲先生(写真
表示右、中央は三杉進先生)は今年11月3日、秋の叙勲で「瑞宝中綬章」を授与されている。
三杉進先生は、循環器脂質研究室の4年先輩で、貝塚市で開業され地域医療に熱心だった。今年9月21日、比良山系の滑落事故で急逝された時は、葬儀場に三杉先生を慕う1000人近い患者さんたちが長蛇の列をなしていた。
肥満・糖尿病診療の楽しみは、臨床・研究・教育にある。肥満・糖尿病専門家の究極の幸せは、患者さんの役に立って感謝され、新しい発見をして評価され、医療スタッフが育ってくれることかもしれない。