日本人のHDLコレステロールは何故増えつづけるのか?
2014年12月13日、大阪市北区にあるブリーゼプラザで「第66回大阪大学内分泌代謝研究会」が開催され、70名が出席した。
午後4時から、「当センター40年間74万人のBMI、血糖、脂質、血圧の変化について」のタイトルで一般講演をした。「1973年4月から2014年3月までの40年間で、男性のBMIは1.3増加、女性は0.2低下していた
表示。総コレステロール・中性脂肪は40年間大きな変化はなかったが、HDLコレステロール(HDL-C)
表示は、この22年間で10.2mg/dl(男性7.5mg/dl、女性12.3mg/dl)増加していた」と話した。
フロアから、住友病院の山田祐也内分泌代謝科部長から「この30年間の人間ドックのメタボリックシンドロームを検討した時、低HDL-C血症者(40mg/dl未満)が著しく減少していた。HDL-Cが増加したのは、スタチンの服用者が増えたからではないか?」と質問された。
私は「男性受診者の11.0%、女性受診者の8.3%が、スタチンなど抗高脂血薬を服用していた。HDL-Cは10mg/dlも増加しているので、スタチンだけでは説明できない。私のところも、男性の低HDL-C血症者が10%から3%まで激減していた。今年9月、名古屋の横山信次先生も"日本人のHDL-Cが10数%増加した"と、新聞に記事を載せられていた」と答えた。
横山信次中部大学教授は、"日本人の善玉コレステロール値が、1989年からこの20年あまりで10数%上がっている。なぜ増えたのかは謎だ(朝日新聞2014年9月18日)"と書かれている。
垂井清一郎
表示大阪大学名誉教授から「日本人の寿命が伸びつづけているが、HDL-Cが上がりつづけていることと関係はないか?」と質問があり、「HDL-Cが増加したことと、平均寿命が上昇していることは関連があるかもしれません」と答えた。
午後6時30分から懇親会があった。「HDL-Cが増えたのは、運動量が増えたためではないか。厚労省の調査では、運動習慣のある者の割合が男女とも増えている」、「たばこを吸う人が減っているためではないか。喫煙率が男女とも下がっている」と、HDL-Cの話で盛り上がった。
脂質代謝が専門の先輩医師は「コレステロールの標準液は簡単に作れるが、HDL‐C直接法の試薬は各メーカーの企業機密になっている。HDL-Cが増えたのは測定法の標準化が遅れたためもあるのではないか。それにしても、測定法の違いだけで10mg/dlという大きな差が出るとは思えない」と言われる。
内分泌が専門の後輩医師は、「イソフラボンなどサプリメントの影響はないか。エストロゲン(女性ホルモン)様作用のある環境ホルモンも関係しているのではないか。食べ物の影響があると思う」と言う。科学好きな仲間と、夢中で話している間に、懇親会の食べ物はなくなっていた。
日本人のHDL(善玉)コレステロールは、この22年間で10mg/dl増えつづけている。食物・運動・喫煙など多くの要因が関与しているかもしれない。「事実を集め、仮説を立て、立証する臨床研究」が必要だ。