日本人のHDLコレステロールは何故増えつづけるのか?

2014年12月20日

  20141213日、大阪市北区にあるブリーゼプラザで「第66回大阪大学内分泌代謝研究会」が開催され、70名が出席した。

午後4時から、「当センター40年間74万人のBMI、血糖、脂質、血圧の変化について」のタイトルで一般講演をした。「19734月から20143月までの40年間で、男性のBMI1.3増加、女性は0.2低下していた 表示。総コレステロール・中性脂肪は40年間大きな変化はなかったが、HDLコレステロール(HDL-C表示は、この22年間で10.2mg/dl(男性7.5mg/dl、女性12.3mg/dl)増加していた」と話した。

 

フロアから、住友病院の山田祐也内分泌代謝科部長から「この30年間の人間ドックのメタボリックシンドロームを検討した時、低HDL-C血症者(40mg/dl未満)が著しく減少していた。HDL-Cが増加したのは、スタチンの服用者が増えたからではないか?」と質問された。

私は「男性受診者の11.0%、女性受診者の8.3%が、スタチンなど抗高脂血薬を服用していた。HDL-C10mg/dlも増加しているので、スタチンだけでは説明できない。私のところも、男性の低HDL-C血症者が10%から3%まで激減していた。今年9月、名古屋の横山信次先生も"日本人のHDL-C10数%増加した"と、新聞に記事を載せられていた」と答えた。

横山信次中部大学教授は、"日本人の善玉コレステロール値が、1989年からこの20年あまりで10数%上がっている。なぜ増えたのかは謎だ(朝日新聞2014918日)"と書かれている。

垂井清一郎 表示大阪大学名誉教授から「日本人の寿命が伸びつづけているが、HDL-Cが上がりつづけていることと関係はないか?」と質問があり、「HDL-Cが増加したことと、平均寿命が上昇していることは関連があるかもしれません」と答えた。

 

午後630分から懇親会があった。「HDL-Cが増えたのは、運動量が増えたためではないか。厚労省の調査では、運動習慣のある者の割合が男女とも増えている」、「たばこを吸う人が減っているためではないか。喫煙率が男女とも下がっている」と、HDL-Cの話で盛り上がった。

脂質代謝が専門の先輩医師は「コレステロールの標準液は簡単に作れるが、HDL‐C直接法の試薬は各メーカーの企業機密になっている。HDL-Cが増えたのは測定法の標準化が遅れたためもあるのではないか。それにしても、測定法の違いだけで10mg/dlという大きな差が出るとは思えない」と言われる。

内分泌が専門の後輩医師は、「イソフラボンなどサプリメントの影響はないか。エストロゲン(女性ホルモン)様作用のある環境ホルモンも関係しているのではないか。食べ物の影響があると思う」と言う。科学好きな仲間と、夢中で話している間に、懇親会の食べ物はなくなっていた。

 

日本人のHDL(善玉)コレステロールは、この22年間で10mg/dl増えつづけている。食物・運動・喫煙など多くの要因が関与しているかもしれない。「事実を集め、仮説を立て、立証する臨床研究」が必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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