綿業倶楽部と「第116回日本医史学会」
2015年4月25~26日、大阪市中央区備後町にある日本綿業倶楽部で、「第116回日本医史学会(小曽戸洋会長)」が開催された。
綿業倶楽部
表示は、備後町の三休橋筋に面し、1931年にできたルネサンス風の歴史的建造物で、国の重要文化財になっている。各部屋の窓にワイヤー入り耐火ガラスを使用していたため、壊滅的な被害を受けた1945年3月の大阪大空襲でも、無傷で残っている。倶楽部建築らしく、中は部屋
表示ごとに異なるスタイルで装飾されている。
日本医史学会は、医史を研究しその普及をはかるための学会で、日本医学会の第1分科会となっている。前理事長の酒井シヅ順天堂大学名誉教授は、NHK大河ドラマ「花神」「獅子の時代」「八重の桜」や、TBS「JIN-仁-」の医学考証をされている。
4月25日午後からの一般演題では、中山茂春氏による「緒方洪庵が武谷椋亭(祐之)に宛てた書簡(安政4年12月20日)」、大沢眞澄氏による「キリシタン迫害―雲仙地獄の場合:温泉科学の視点より」、殿崎正明氏による「野口英世初恋の人山内ヨネの医術開業後期試験合格日をめぐる新知見について」など、興味深い演題がつづく。26日には、永藤欣久氏による「東洋女子歯科医学専門学校校長・宇田尚」もあった。
大阪で開催されたためかコングレスバッグには、「大阪大学適塾記念センター」「史跡・重要文化財・適塾」「緒方洪庵生誕200年記念・大阪除痘館」など、緒方洪庵や適塾に関する資料がたくさん入っていた。
東京から日本医史学会に来た友人は「過去の大学の歴史や伝統を引き継いでいかないと、その大学は発展しない」と言う。私は「大阪大学は、創設者の緒方洪庵以来、先人の業績を引き継ぎながら、研究をつづけている。阪大2内の研究は、英語論文を出して終わりではなく、それを社会に役立たせて初めて研究が完成する。内臓脂肪型肥満も、特定健診・保健指導というかたちで世の中の役に立っている」と話した。
「大阪大学内分泌代謝内科学教室方針七カ条」(下村伊一郎教授)は、「1)先輩たちが築いてきた実績に感謝し高い誇りを持ち、診療、研究、教育を通して、構成員の自己実現と世の中の役に立つことを目指す。2)一つ一つの仕事をきちんとまとめていく。3)組織の一員として個々の役割を果たす。4)組織の中での、グループおよび個人のidentityと自主性を大事にする。5)大学生活を楽しみ、充実させる。6)先輩、同僚を敬い、後進を育てていく。7)気持ちのいい挨拶と時間を守る。」となっており、伝統が引き継がれている。
日本の医学研究の先人は、多くの偉大な業績を残している。歴史を大切にしない大学・研究機関は、いくら成績のよい人材を集めても、優れた研究はできない。歴史を学び、引き継いでいくことが重要だ。