スピーチのあり方と内臓脂肪型肥満
2015年11月15日日曜日、リーガロイヤルホテル大阪で「松澤佑次先生・瑞宝中綬章受賞祝賀会」が開催され、240名が出席した。
午前11時から、30テーブルの座席指定で、コース料理を食べながら、同級生7人と楽しく団欒した。前方壇上には、父の"薫五等瑞宝章の額
表示"と同じ形をした"瑞宝中綬章の額"が飾られてあった。
午後1時10分から2時10分まで、松澤佑次阪大名誉教授の謝辞があった。リピドーシス、高HDLコレステロール血症、内臓脂肪型肥満、メタボリックシンドロームからアディポネクチンまで、ユーモアを交えながら1時間、原稿なしで話され、「今回の受賞は、みなさんを代表していただいたと思っています」と締めくくられた。全て具体的なオリジナルな話で、感謝の言葉も多く、記憶に残る理想的なスピーチだった。
11月21日土曜日午前、テレビを見ていたら、11月19日に甲子園球場で行われた「阪神・中村勝広GMお別れ会」を放送していた。
主催者代表の長男・大輔氏が謝辞を述べていた。中村大輔氏は、阪大医学部平成18年卒で32年後輩になる。「中村君は阪神中村監督の息子さんで、灘高校から阪大医学部に入学、循環器を専門としている」と聞いていたので、甲子園球場の阪神選手や多くのファンの前で、うまく話せるかどうか心配して観た。
中村大輔氏は、「必ず阪神を優勝させたいと家族にも話していたが、志半ばで、脳出血で急逝した。思い返せば1992年。父が監督をしてあと一歩のところで優勝を逃した翌日、この甲子園球場を満員の阪神ファンが埋め尽くした。『中村監督、夢をありがとう』と書かれた横断幕に私たち家族は救われ、父は優勝という夢を追い続け戦い続けることができた。
最近では2人の孫の成長を、目を細めて喜び、一緒に遊んでいた姿が思い浮かぶ。父のおかげで私は今、小さいころからの夢であった医師として働き、現在アメリカに住んでいる」と話された。
文字に直すと1900字に及ぶ長文を、原稿なしで、終始前を向いて坦々と話されていた。阪神タイガースに命を懸けていたこと、世話になった人たちのこと、家族のことなど過不足なく、全てオリジナルな話で、感動的なスピーチだった。
阪大の循環器脂質研究室時代、松澤佑次先生から「学会の講演やシンポジウムでは、原稿を用意して練習するのはいいが、本番では読むな。原稿を読むだけなら、誰にでもできる。朴訥でもいい。自分の頭の中で考えていることを、自分の言葉で話せ」と教わった。
NHK「きょうの健康」の「ご用心!内臓脂肪型肥満
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表示1994年10月10日放送」を収録した際も、担当者から、「机の上には何も置かないで下さい。机の上の原稿や資料に目をやると、本当に専門家なのか視聴者は不信感を持つ」とアドバイスされた。
個人に関するスピーチは、具体的なエピソードが多いと説得力がある。スピーチや学会講演では、机の上に原稿・資料など何も置かず、下に目をやることなく、絶えず前を向いて話すのが基本だ。