中国の農業と食の安全
2016年1月29~30日、東京新宿にある京王プラザホテルで「第44回日本総合健診医学会」が開催された。
学会では、大腸疾患に関するシンポジウムや演題があり、「潰瘍性大腸炎患者の病変部位には、プロピレングリコールが多く沈着していた。プロピレングリコールは、米騒動でタイ米が輸入された1993年、売れないタイ米の甘味を増すため使い始められた。プロピレングリコールには保湿性があり、弁当のご飯などにも使用されるようになってきている。潰瘍性大腸炎が急増している要因の一つとして、プロピレングリコールの可能性がある」という報告があった。
潰瘍性大腸炎は、1995年4万人だったものが2013年には16万人と4倍に急増している。武田薬品2015年4月~12月の純利益は43%増加したが、これは潰瘍性大腸炎・クローン病の新薬"エンティビオ"と癌治療薬"ベルケイド"の売り上げが伸びたためだ。エンティビオは1バイエル60万円で8週毎に点滴し、年間2000~3000億円の市場が見込まれている。
京王プラザホテルのフロント前や、朝食バイキングでは中国人観光客が多かった。中国人が増えたためだろうか、ホテルではCNN(米国)、BBC(英国)に加え、以前なかったCCTV(中国国営放送)も見ることができるようになっていた。
CCTVを見ると農業特集をしており、「中国の農業は、3つの課題をかかえている。第1は化学肥料・農薬の問題。水や土壌の汚染が深刻になっており、化学肥料・農薬の使用が制限されたため、豊作がつづかない可能性がある。第2は生産性が上がったのに、所得がそれほど増えていない。生産地に近い所に食品加工工場をつくると、所得も上がり地方の活性化にもなる。第3は都市部で食の嗜好が変わり、健康志向が高まっている。農業を生産性重視から品質重視に変える必要がある」と放送していた。
中国の農業は日本にも影響があり、日本は中国から毎年10億円のコメを輸入し、弁当などに使われている。
CCTVの天気予報では、「・・・香港・広州・四川・海南島・魚釣島(尖閣諸島)・台北・高雄」の天気予報をしていた。
CCTVのニュースでは、「中国は南沙諸島の平和と繁栄に尽くしている。美国が南シナ海の水をかき混ぜに来ている。南沙諸島は、康熙帝以来の中国固有の領土で、カンボジアなど東南アジア諸国も支持している」と伝えていた。
シンガポール在住の人に「南沙諸島の問題で、本当に東南アジア諸国は中国を支持しているのか?」と聞くと、「マレーシア、シンガポール、インドネシアなどでは、中国人の華僑がたくさん住み着いている。日本は経済だけだ。インドネシアで新幹線受注に負けたのも、中国の方が人的交流が多かったためだ」と答えられた。
食は健康と大きく関連しており、食品添加物の安全性・健康への影響に関する研究が急がれる。TPPで海外からの食品が多く輸入され、日本からも輸出される。食の安全は、これからの日本にとって重要な問題だ。