大阪大学同窓会と破裂:超高齢化社会の医療
2016年5月1日、大阪大学豊中キャンパスにある大阪大学会館(旧イ号館
表示)講堂で「第11回大阪大学ホームカミングデイ(阪大同窓会)」が開催され、500名が出席した。
午前9時20分、豊中キャンパスに行くと、運動場
表示はそのままだったが、キャンパスは1968年から2年間過ごした教養時代に比べ、大きな建物が林立し、すっかり変わっていた。ちょうど銀杏祭を行っており、模擬店
表示やダンスなどで賑わっていた。掲示板には、著名な経営者による講義
表示の予定表が貼ってあり、今の学生をうらやましく思った。
午前10時、阪大同窓会は関西テレビの関純子アナウンサー(人間科学部卒)の司会で始まった。前から3列目中央で聴講した。
西尾章治郎阪大総長は「豊中・吹田キャンパスに加え、箕面船場駅東側に新箕面キャンパスを2021年に、大阪市にも中之島キャンパスを作る。東京での阪大同窓会は550名が参加した。阪大同窓会バンコクは100名が参加、阪大同窓会上海は60名が参加、今年はシリコンバレー、岡山でも同窓会を行う」と挨拶された。阪大卒業生の活躍の場も、大阪から東京や海外に移っている。
午前10時30分から林家染雀さん(文学部卒)による落語「延陽伯」、次いで作家の久坂部羊氏(医学部卒)によるトークがあった。
久坂部羊氏は、2003年「廃用身」で作家デビュー、2014年「悪医」で第3回日本医療小説大賞を受賞されている。2006年出版の「無痛~診える眼」は、西島英俊と伊藤英明主演で、2015年10~12月フジテレビで放送された。
最前列に、熊谷信昭、岸本忠三、鷲田清一、平野俊夫氏など歴代の阪大総長が着席され緊張感漂う中、学生時代の解剖実習のエピソードなど、久坂部氏はユーモアたっぷりに話された。また、「第2作"破裂"の帯に"医者は三人殺して初めて一人前になる"と書かれているが、出版社が私の了解なしにつけた」とエクスキューズされていた。
2004年に出版された「破裂」は、2015年10~11月NHK土曜ドラマで放送された。心臓外科医の香村鷹一郎(椎名桔平)は、老化した心臓を若返らせる"夢の治療薬"を開発するが、心臓破裂という副作用を持つ。天才官僚の佐久間和尚(遠藤賢一)は、超高齢化社会の究極的解決のため、香村療法の副作用を利用し、老人が寝たきりになる前に苦しまずに死ねる"プロジェクト天寿"を計画する。
私と同年代の太極拳仲間は、みんな「ピンピンコロリと死にたい」と言う。医療の進歩は、平均寿命を延ばしたが、寝たきり老人も増やしている。多くの日本人も、元気で長生きすることを望んでいるだろう。一方、実際の医療現場では、何1000万円かかろうと、一分一秒でも長く生きる延命治療が求められている。小説「破裂」は、今の日本の医療がかかえる問題点に"何が正義で、何が悪か"鋭く切り込んだ作品だ。
大阪大学ホームカミングデイ(同窓会)は、阪大の現状を知り、お笑いあり、トークありの有意義なものだった。超高齢化社会を迎え、私たちはどう生き、日本の医療はどうあるべきか考えさせられた。