大学クラス会と自由・格差・産科難民
2016年9月3日、リーガロイヤルホテル大阪"牡丹の間"で「阪大医学部49会」が開かれた。
午後6時、記念撮影をした。北は北海道旭川から南は愛媛県まで、99名中33名(66~69歳)が参加した。
午後7時から、各自近況報告をした。33名中、勤務医が22名(うち国公立病院長4名)、開業医が11名(うち私立病院長5名)で、全員現役でバリバリ働いている。T君は「37人の患者を受け持ち、そのうち急性期が9人いる」と話す。脳外科や呼吸器外科で手術をしている同級生もいた。
趣味はジム、太極拳、テニス、山登り、サイクリング、家庭菜園などで、みんな健康に気を配っている。孫は2~4人、9人の孫がいる同級生もいた。
午後8時50分、地下2階にあるセラーバーで2次会があった。勤務医の同級生が「定年になり、開業しようと思っている」と言うと、開業している同級生は「大都市は医師過剰になり、新規開業が難しくなっているが、設備投資をしなければ、やっていけるだろう」とアドバイスした。また「東京圏は医師過剰なのに、成田に医学部を作ろうとしている」と言う。私は「成田ではなく、医師不足の地域、北海道函館に作ればいい」と言った。
同級生は「医師の地域偏在が大きくなったのは、2004年のスーパーローテートからで、研修医が行きたい病院を自由に選べるようになったからだ。昔は、医局が"2年間過疎地に行け"と命令すれば、従わざるを得なかった。今は、自由になり、研修医は都市を選ぶため、都市と過疎地の格差が広がっている」と言う。
自由は格差を拡大させる。自由には、一長一短がある。2000年にできた大規模小売店舗立地法で大型店の出店が自由になり、地方の商店街はシャッター通りになった。2002年のタクシー参入規制緩和で、タクシーの参入が自由となり、大阪ではタクシーの運転手だけで家族を養うことができなくなった。自由と平等(格差の少ない社会)の両立は難しい。
産婦人科医の同級生は「スーパーローテートで産科が必須になり産科希望者が増えたが、2010年から必須でなく選択になったため、産科希望者が減ってきている。産科医の偏在は、新専門医制度が2018年から始まると、さらに大きくなる。
大阪の産科は恵まれている。島根県は東西に長く、産科まで片道2時間かかる所がある。奈良県も南半分に産科がない。岐阜県の白川郷の妊婦は、雪道を都会まで行かなくてはならない。これからさらに産科難民が増える」と言う。
島根県に「メタボリックシンドロームの概念と保健指導」の講演に行ったとき(メタボ教室第51段「文人ゆかりの街」)、保健師さんに「島根県の産科医が閉院するなどして減少し困っている」と言われた。奈良県南部の十津川村・大塔村には、1週間泊まって僻地検診をしたことがある。白川郷には同級生と生き、合掌造り家に泊まった。
少子化対策の第一歩は、赤ちゃんが無事生まれる環境を整えることだ。スーパーローテートに新専門医制度が加わり、産科の地域偏在がさらに大きくなる方向に動いている。産科難民が増えない施策が必要だ。