東京有明の食と「肥満症診療ガイドライン2016」

2016年10月11日

    20161078日、東京都江東区有明にある東京ファッションタウンビルで「第37回日本肥満学会(会長:小川佳宏東京医科歯科大学教授)」が開催された。

107日午後010分からのランチョン弁当は、日本料理"なだ万"の「ビジョナリー弁当 表示」だった。秋の食材をふんだんに使い、品数も赤魚味噌祐庵焼など29品と多く、色彩豊かでバランスのとれた美味しい弁当だった。

午後110分、総会があった。次期会長は下村伊一郎大阪大学教授で、20171078日大阪国際会議場で行われる。テーマは、「肥満症学『適塾』」で、ポスター 表示は緒方洪庵の適塾の中心に、内臓脂肪型肥満のCT画像が配置されている。適塾と毛筆で書かれた文字は、教授自ら50枚書き、その中から選ばれたという。

午後330分、シンポジウム4「肥満症診療ガイドライン2016:改定のポイントとこれからの肥満症診療」があった。各シンポジストは、肥満・内臓脂肪蓄積が糖尿病・動脈硬化症などの生活習慣病に影響し、減量によって改善することを、エビデンスを示しながら話された。

今回の改定では、BMI 35以上を高度肥満として分けている。内臓脂肪蓄積に伴う糖尿病・高血圧・脂質異常症などは、3%の減量で改善する。減量目標を肥満症では3%以上、高度肥満では510%とし、エンドポイントも明確になっている。

シンポジストとして、医薬品医療機器総合機構(PMDA)審査マネジメント部の野村由美子氏が参加された。PMDAは厚労省の独立行政法人で、医薬品や医療機器などの承認審査などを行う日本で唯一の組織だ。PMDAの方が学会に出席されることは、めったになく、質問は野村由美子氏に集中した。

私はフロアから「肥満症治療薬のマジンドールは、年間20億円という上限が設定されている。高血圧薬は5600億円、糖尿病薬は5100億円、抗がん薬は8100億円使われ上限がない。オプジーボなど抗がん薬は、何兆円にも膨れ上がるかもしれないが青天井になっている。せっかくいい肥満症治療薬を開発しても、厚労省の認可が降りないと、研究者の開発意欲をそぐ。肥満症治療薬の認可に厳しすぎるのではないか」と質問した。

野村由美子氏は「高血圧・糖尿病・癌などは、いくら低下すればいいかというエンドポイントが設定されている。肥満症の場合、エンドポイントがはっきりしていなかった」と答えられた。

 

午後6時、東京ベイ有明ワシントンホテル20階にある「マダム シェンロン有明」で、阪大2内の肥満研究仲間と中華料理を食べた。窓際の席で、眼下にりんかい線国際展示場駅が見え、その向こうに林立する都心高層ビル街のネオンがきれいだ。右手に有明駅があり、時々ゆりかもめが止まって、豊洲方面へまた走っていく。前菜4種盛、フカヒレスープ、炒め物と、どれも上品で味付けがいい。紹興酒を飲みながら、830分まで話をした。

日本では、肥満症治療薬の認可が厳しかった。シンポジウム「肥満症診療ガイドライン2016」には、医薬品の承認審査をするPMDAの方も参加され、病気としての肥満症を理解してもらい、有意義なものとなった。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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