予防医学と健康教育・健診センター経営

2017年1月31日

    201712728日、千葉県浦安市にある"東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート"で、「第45回日本総合健診医学会(会長:東海大学西﨑泰弘健康管理学教授)」が開催された。

127日午前1015分、自見はなこ参議院議員による特別講演6「健康寿命延伸を支える健康教育・健康経営」があった。自見参議院議員は、東海大学医学部を卒業された小児科医だ。国会議員が学会で講演されることは珍しいので、興味深く傾聴した。

自見議員は「医系議員は20数名で、参議院議員は3人いる。厚生労働部会で政策案をつくり、厚生労働委員会で決めている。社会保障費は32兆円に膨らみ、国の予算の大きな部分を占めるようになった。社会保障費は、このままでは6500億円増となるが、5000億円に抑えるように言われている。

予防医学で健康寿命を延ばし、医療費の増加を抑制し、日本の皆保険制度を守りたい。ビッグデータを用い、抜本的な改革を行なう。

小児メタボが増えている。小児の肥満は20年で2倍になっている(メタボ教室第39段「小児メタボ診断基準」)。小児肥満は、成人になってから生活習慣病を来しやすいので、小児期からの健康教育が必要だ」と、スライド・原稿なしで、わかりやすく話された。

 

フロアから私は「国策として予防医学をするのはいいことだ。しかし、現実は逆の方向に向かっている。企業からの人間ドック受診補助金が、3500億円から3200億円に減り、受診者が減少している。東京は景気がいいのでまだいいが、大阪の健診センターは経営が厳しくなっている(大阪では10億円の負債を出し、閉鎖した健診センターもある)。

医療費のパイは限られている。大学の医学研究費も毎年削減されつづけ、病院の診療報酬も減っているので病院経営も赤字の所が増えている(病院の4割が赤字)。国は医療費増加を高齢化社会によるものとしているが、実際は、高額な薬剤などによる。予防医学や病院の診療報酬を削るより、全体のバランスを考え予算を組むのがよいのではないか」と質問した。

 

自見議員は「徳永先生がおっしゃる通り、医療費の財源は限られている。どこかが増えれば、どこかが減る。医療費は各省庁、厚労省の各部署から予算の要求がある。医師だけで決めることができれば、全体のバランスをとることができるが、それができない。医師は、タバコは悪いので禁止した方がいいとわかっているが、タバコ生産農家のことも考え、税収は自治体に入るので総務省も説得しなければならない。

高額薬剤に関しては、企業の開発意欲を削ぐ面もある。大学の研究費も企業から一部出ている。日本の創薬による経済的なことも考慮しなくてはならない。最も医療費を使うのは、死亡する前の12年間だ。どういう死に方がいいかなど、みなさんと考えていきたい」と丁寧に答えられた。

健康寿命を延伸するには、健康教育・健診など予防医学が有効だ。しかし、実際には企業の健診センター受診への補助金は削減され、受診しにくくなっている。限られた医療費の中で、医療費配分の再考が必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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