乳がん検診と受動喫煙・敷地内全面禁煙
2017年2月18日、大阪府豊中市にある千里ライフサイエンスセンターで、「第23回大阪がん検診治療研究会(阪本康夫代表世話人)」が開催された。
午後3時10分、大阪大学の祖父江友孝社会医学講座環境医学教授による講演「超音波検査による乳がん検診の有用性比較試験(J‐START)の結果について」があった。座長は、大阪大学乳腺外科の金昇普先生がされた。
祖父江(そぶえ)教授は阪大医学部の9年後輩で、灘高校から2番で合格されている。髪が黒くふさふさし、年齢より若く見える。灘高時代はジャニーズ系で、近隣女子高生の間でファンクラブができていたという。
祖父江教授は「40歳代の女性7万6000人を対象に、乳がん検診における超音波検査の有用性を検討した。介入群(超音波+マンモグラフィ+視触診)と非介入群(マンモグラフィ+視触診)の2群にランダム割り付けし、2年間間隔で2回検診を行い、検診精度、累積進行がん罹患率を比較した。介入群の感度は91.1%と非介入群77.0%に比べ高く、超音波検査が死亡率減少につながることが示唆された(Lancet 2016)」と話された。
フロアからの「乳がん検診は、50歳からがいいのか40歳からがいいのか」との質問に、「米国では高齢での乳がん発症が多い。日本人の乳がん発症は40歳代がピークなので、40歳から乳がん検診を行った方がいい」と答えられた。
祖父江教授は、国の喫煙対策の中心としても活躍されている。厚労省の「喫煙と健康影響」の座長をされ、2016年9月「たばこ白書」をまとめられた。日本の受動喫煙対策を世界最低レベルとし、公共施設や飲食店など不特定多数が利用する室内の全面禁煙を提言されている。
喫煙対策には、次から次へと抵抗勢力が現れてくる。2008年1月、厚労省幹部に会った時、私が「特定健診・保健指導を行う施設は、敷地内全面禁煙の施設に限ることになっていたのに、確定版では削除されている。財務省かJT(日本たばこ産業)から圧力がかかったのか」聞くと、「財務省からも、JTからも一言も言われていない。敷地内全面に反対しているのは、先生の仲間ですよ。精神科を持つ病院(タバコ依存症患者が入院している)が、敷地内全面禁煙に反対している。先生の方から精神科の病院を説得してもらったら、いつでも敷地内全面禁煙にします」と答えられた。
タバコ値上げも、10数年前は財務省とタバコ生産農家がある岩手県の国会議員が反対していたが、今は総務省と九州の国会議員が反対しているという(メタボ教室第636段「予防医学」)。歴代財務省事務次官のJTへの天下りがなくなり、岩手県選出の国会議員の力が弱くなったためだろうか。
大阪府庁は橋本徹大阪府知事が敷地内全面禁煙にしていたが、東京都庁は石原慎太郎東京都知事がヘビースモーカーで、都庁内には喫煙室が25あった(メタボ教室第335段「受動喫煙」)。小池百合子東京都知事に変わり、東京都庁は敷地内全面禁煙になっているのだろうか。
日本人の乳がん検診は、マンモグラフィ+超音波が理想で、40歳から行うとよい。受動喫煙で、日本では年間1万5000人が死亡している。少なくとも医療機関・公共施設では敷地内全面禁煙を実施すべきだ。