特定保健指導・IoTと肥満の健康格差
2017年10月7~8日、大阪国際会議場で「第38回日本肥満学会」が開催された。
10月7日午前9時、シンポジウム2「社会で取り組む肥満症対策~小児期から成人期まで:予防と介入(治療)の実際と成果」があった。
あいち健康の森健康科学総合センターの村本あき子氏は「肥満症への介入:特定保健指導~IoTを活用した生活習慣改善支援」のタイトルで話された。IoT(Internet of Things)は、さまざまなモノをインターネットに接続し、モニタリングやコントロールをすることだ。
村本氏は「保健指導対象者が体重・血圧・歩数を毎日測定し、クラウドにあげる。恵比寿・弁財天・福禄寿など七福神が、それぞれのイメージを活かして、対象者の記録状況に合わせ応援メッセージをスマホに送る。
23施設でHbA1c6.5%以上の人を対象に、IoTを活用した支援を行った所、3か月後のHbA1cは、IoT利用なし群の0.16%低下に比べ、IoT利用群は0.56%とより低下した。IoTで、東海道53次をリアルに感じることができる試みも行っている」と話された。
2015年の経産省「IoT推進のための新産業モデル創出基盤事業」によって、各企業はいち早い市場化をめざし、しのぎを削っている。
東京大学保健社会学科の近藤尚己准教授は「肥満の健康格差とその対策」のタイトルで、「豊かな国では、貧困等、社会経済的に不利なものほど肥満になりやすい。低所得の人は安い食品となり、蛋白質や野菜が少なくなる。肥満は貧困層の病気となっている。
健康日本21では、こうすればいいという知識は身に付いたが、行動は伴わなかった。生活習慣改善には、理屈の前に体験が必要だ。肥満世界一のメキシコでは、地下鉄にスクワットマシーンを置いて、10回するとチケットがもらえるようになっている。スウェーデンでは、エスカレーターを使わないようピアノの階段にしている所もある」と話された。
2007年1月5日のメタボ教室第7段「肥満格差社会」にも書いたが、経済状態による肥満格差は、さらに広がって行きそうだ。2014年の厚労省「国民健康・栄養調査」では、所得が200万円未満の世帯の肥満男性は38.8%と、600万円以上の世帯の25.6%に比べ高くなっている。
総合討論では、「小児肥満の親は、不健康な生活習慣を送っている人が多い。親の教育が必要だ」「減量できた肥満者には、ご褒美をあげる」「IoT戦略でゲーム化し、減量を楽しんで行うとよい」「職域においては、不規則な食生活が肥満を引き起こす。今、長時間過重労働が問題になっており、不健康な生活習慣を変えるチャンスだ」などの意見が出た。
午前11時40分から、ランチョンセミナーがあった。大会特性弁当の阪大オリジナルランチボックス「スパイス&スマイル御膳‼
表示」は、658kcal、たんぱく質28.4g、脂質22.9g、炭水化物92g、食塩2.5gで、味もよかった。
特定保健指導では、IoTを活用した生活習慣改善支援など、様々な方法が試みられている。低所得者層に肥満が多い。格差社会の広がりで低所得者層が増えており、社会全体で肥満対策に取り組むことが必要だ。