大阪大学産学連携と杜仲エラストマー・医療用品
2017年11月13日、大阪市北区にあるグランフロント北館で、異業種の会があった。
午後6時、大阪大学工学研究科の中澤慶久(よしひさ)特任教授による講演「杜仲による新しい産業の創出をめざして」があった。
中澤氏は「日立造船にバイオ研究者として入社した。日立造船は何でもやる社風で、杜仲の研究を行った。杜仲は古くから漢方薬として使われ、養命酒の原料にもなっている。日立造船で開発した杜仲茶は、「血圧高めの方に」のトクホ第1号となり、年商100億円のヒット商品になった。
高分子機能性素材としての杜仲の研究を、大阪大学で始めた。大阪大学は産学連携が盛んで、教官529名に企業から200人が加わり、700人以上が工学の研究・教育をしている。大阪大学吹田キャンパスには、2000本以上の杜仲の木が植えられている。
杜仲には、ゴムの木のように天然ゴムを産生する特性がある。実や種にゴム成分が含まれており、毎年生産することができる。杜仲由来のゴム(杜仲エラストマー)は、石油ナフサ由来のゴムに比べ高分子で、耐久性に優れている。CO2も排泄せず、環境にもいい。
杜仲エラストマーは、ゴルフボール・化粧品・3Dプリンターなどに使われている。ゴルフボールに数%入れることによって、耐久性が増す。医療の分野でも、膝関節の半月板に利用される。現在、自動車・住宅業界・医療福祉用品業界など70社から、杜仲の共同研究の申し出がきている。
杜仲は、中国で栽培している。杜仲の木は、年間40mmの雨量でも育ち、地上の部分と同じ高さで根を張る。杜仲を中国大陸内陸部の砂漠地帯に植樹することによって、黄砂のもととなる砂漠を少しでも緑化したい」と話された。
午後7時10分から懇親会があった。この日最大の話題は、この異業種の会に7年間おられた新原芳明(しんはらよしあけ)さんが、前日の2017年11月12日に行われた呉市長選で、初当選されたことだった。
新原氏は2008年、財務省から造幣局理事長として大阪に来られ、この異業種の会に入会、50回以上参加された。新原氏は財務省時代、国会や衆参予算委員会で国会議員の後ろにいて助言をされていた。新原氏と私は同い年でウマが合い、日本の財政・金融・貿易・農業・たばこ税・少子高齢化問題やベルギー大使館時代の話、造幣局の桜の通り抜けの歴史など、2015年に退会されるまでいろいろな話をした。
新原氏は、まだ外国人観光客が少ない頃、「大阪を活性化させるには、大阪を魅力的な観光都市にして、アジア人を呼び込めばいい」と言われていたが、まさに的中した。呉市の人口は33万人から22万人と減少している。情報通で、人脈も広い新原氏が呉市長に就任することで、呉市も発展することだろう。
中澤慶久教授と名刺交換をし、「阪大吹田キャンパスで、肥満の研究をしていた。日立造船の安藤重寿会長には、いろいろお世話になっている。安藤会長は温厚で話しやすい方で、10数回会食をした」と挨拶した。
大阪大学は、日本で最も産学連携が盛んな大学だ。日立造船との産学連携では、杜仲エラストマーを使ったゴルフボール・3Dプリンター・化粧品・医療福祉用品などが開発され、実用化されている。