内臓脂肪症候群からアディポネクチン・T-カドヘリンへ
2018年1月13日、大阪市北区にあるリーガロイヤルホテル大阪"光琳の間"で、「第66回大阪大学第二内科同窓会」が開催された。
午後4時、堀田紀久子阪大未来医療開発部特任教授(平成元年卒)による講演「肥満・肥満症のゲノム・エピゲノム解析」があった。「FTO遺伝子など肥満・肥満症に関連する多くの遺伝子が見つかっている。・・50万人の遺伝子多型解析で、日本人、中国人(漢民族)、欧米人は完全に分かれている。日本人と中国人のハーフの人は、中間に位置する。・・これから、ビッグデータやAI(人工知能)を使って、次世代の遺伝子解析が進むだろう」と話された。
午後5時、藤島裕也、前田法一らによる小沢修造賞授賞講演「T-カドヘリンを介したアディポネクチンの血管組織への結合は、新生内膜増殖および粥状硬化症の進展を抑制する」のがあった。アディポネクチンの抗動脈硬化作用がT-カドヘリン
表示を介していることが明らかとなり、動脈硬化の特効薬が開発される可能性が出てきた。
午後6時から、総会があった。阪大2内は、6つの研究室(循環器脂質研、内分泌研、胃腸膵研、肝研、血液研、神経研)からなる140人の大教室だった。内科も細分化されると、他分野の新しい情報が入り難くなる。臓器別内科より、ナンバー内科の方が、臨床面でも研究面でも有利だ。
2017年12月2日、神戸国際会議場で行われた日本内科学会近畿地方会の評議委員会では、支部代表は上野聡奈良医大神経内科教授(昭和52年卒)、副代表は山下静也阪大教授(昭和54年卒)、会長は芳川浩男兵庫医大神経内科教授(昭和55年卒)と、壇上にいる3人とも阪大2内出身者で、同じ釜の飯を食った仲間だった。山下静也教授は循環器脂質研の5年後輩で、2018年7月12-13日大阪国際会議場で開催される第50回日本動脈硬化学会
表示の会長をする。
下村伊一郎阪大教授は、同窓会会長挨拶で「第2内科は、優しい医者・考える医者・楽しむ医者を伝統としてきた。・・松澤先生が教授になられた頃、横浜で肥満学会か動脈硬化学会があった。中華料理を食べながら、"BMIが22や23の人でも内臓脂肪蓄積者は合併症が多い"など、垂井先生、松澤先生、徳永先生らが、内臓脂肪症候群の話だけを、楽しそうに延々2時間話されていた。・・今度、"大阪大学第二内科創設100周年記念誌"を出版するので、第2内科の想い出を寄稿して下さい」と話された。
横浜中華街に行ったのは、1991年11月29日、第12回日本肥満学会の時だ。中華街3大名店と称される「華正樓」で、これまで見たことのない大きな"フカヒレの姿煮"を食べたことを覚えている。メンバーは、松澤佑次阪大教授、垂井清一郎名誉教授、石川勝憲国立呉病院院長、徳永勝人、藤岡滋典、中村正、小畠隆司、毛野義明、小谷一晃、新井武志、西田誠、吉田新吾、下村伊一郎、小室竜太郎、石井和子(管理栄養士)の15人だった。
肥満学会の夜は、肥満研究グループ全員で食事に行き、"何が今肥満のトピックスか"など、学問の話をしていた。内臓脂肪から始まった肥満研究は、アディポネクチン、T-カドヘリンへと進化しつづけている。