阪大循環器内科同窓会と心血管内治療アウトバウンド
2018年6月30日、大阪市北区にあるリーガロイヤルホテルで「大阪大学循環器内科同窓会」が開催され、193名が出席した。
午後5時30分、会長の坂田泰史阪大循環器内科教授は「16名が新入会した。大学には医局員85人がいる。英語論文は17編出した」と挨拶された。
午後6時、斎藤能彦奈良医大循環器・腎臓・代謝内科教授による特別講演「心腎連関の分子機序」があり、最後に「日本の科学論文の世界に占める割合が低下している。2002~04年の日本の論文数は、米国に次いで2位だったが、2012~14年は5位になった。質を示す上位1%の論文も5位から12位になった。中国の論文数は6位から2位に、論文の質は9位から2位に急上昇した。その分野で最も権威ある医学雑誌Circulation(循環器学)やBlood(血液学)の掲載が、4分の1に減っている。日本の研究費が増えないためだ」と話された。
私が阪大2内循環器脂質研のチーフをしていた頃、研究室員30人で英語論文を1991年は20編、1992年は9編、1993年は15編出した。Circulation には"肥満者の心機能(中島忠久他、1985)
表示"で掲載されたことがある。大学勤務医は「助成金が減り、研究費が半減した。病棟が忙しく、研究する時間が少なくなっている」と言う。
午後7時、懇親会があった。先輩医師は、「日本の研究が凋落したのは、国が研究費を増やさないことが最大の要因だ。留学する医局員も減っている。中国や韓国のようなハングリー精神がなくなっている」と言われた。
私が大学勤務医に、「何故、留学しないのか?」聞くと、「今は、日本でも欧米と同じように研究できる。留学すると1000万円の赤字になる。仕事を持つ女性と結婚していると、キャリアが途絶えることになり家族で行きにくい」と答えた。私が留学していた1980年代は、留学先から450~500万円の給料があり、日本の大学からも給与の70%が出ていた。
阪大2内循環器脂質研の後輩医師と話をした。「角辻君が、エジプトや中近東へ頻繁に行って、心臓カテーテル治療をしている。今年2月ニューヨークで行われた国際学会で、角辻君が世界の10名に選ばれ、ライブの実践教育を行った。角辻君は、心臓バイパス手術が必要な三枝病変の患者でも、心カテで治療をすることができる」と言う。
阪大循環器内科の角辻暁国際循環器学寄付講座教授は、阪大2内循環器脂質研の後輩で、2017年度は34回の心血管内治療アウトバウンド事業(サウジアラビア・イラン・インド・バングラデシュ・インドネシア・マレーシア・中国・韓国・台湾・フランス・スペイン・スイス・アメリカ・ブラジル)を行っている。サウジアラビアでは、経産省事業として医療部門に協力し、循環器診断や治療の導入もしている。インバウンド事業としては、2017年はエジプト人医師2名を外国人医療従事研修医師として、8か国(UAE・タイ・マレーシア・中国・韓国・香港・イギリス・ニュージーランド)より18名の研修・見学希望を受け入れ、質の高いインバウンド教育を行っている。
日本の科学研究の凋落を防ぐには、国が研究費を増やす必要がある。海外留学を増やすには、国からの支援が必要だ。手先が器用な日本人の特徴を活かした心血管内治療など、アウトバウンド事業、インバウンド事業を積極的に行い、国際貢献をするとよい。