病診地域連携の会とダヴィンチ手術
2018年9月22日、大阪市北区にある新阪急ホテルで「第3回消化器内視鏡地域連携フォーラム」「第13回大阪消化器外科連携セミナー」が開催された。
午後6時、竹原徹郎阪大消化器内科教授は「消化器内科と消化器外科の地域連携の会が同じ日になったので、内科と外科が共同で行うことにした」と挨拶された。私のいる職場では、阪大消化器内科から毎日交代で胃カメラをしに来てもらっており、確定診断した胃癌患者さんを紹介している。
林義人阪大消化器内科医師は、「阪大の内視鏡治療の取り組み」のタイトルで、「食道癌・胃癌・大腸癌のESD(内視鏡的粘膜下層切開剥離術)は、紹介から入院までの期間は平均1か月、入院期間は9日間になっている」と話された。
黒川幸典阪大消化器外科医師は、「阪大でしか受けられない低侵襲胃癌手術」のタイトルで、「胃の上部にある癌は、阪大ではグレリン細胞のある胃穹窿部を一部残す腹腔鏡下胃切除術を行っている。胃の穹窿部から胃上部にかけては、グレリン(摂食中枢を刺激し食欲を増すホルモン)細胞があり、食欲を落とさず低栄養にならない。
今年4月、食道癌・胃癌・直腸癌のダヴィンチ手術(ロボット支援下手術)が保険収載された。阪大では2013年から食道癌81例、胃癌67例、直腸癌63例のダヴィンチ手術を行なった。ダヴィンチ手術は従来の腹腔鏡手術に比べ、術後の合併症が半分と少なかった。ダヴィンチ手術は、食道癌は5例以上、胃癌は10例以上を経験した常勤医がいる病院でないとできない。第3世代のダヴィンチを使用していたが、今年11月第4世代のダヴィンチが加わる」と話された。
午後7時20分から懇親会があった。土岐祐一郎阪大消化器外科教授と、30年ぶりに話をした。1988年9月5日午前3時20分、息子が虫垂炎で公立学校共済組合近畿中央病院へ入院した時の主治医が、卒後3年目の土岐祐一郎先生だった。時が経つのは、夢のように速い。土岐教授は来年、日本外科学会の会長をされる。
「阪大の肥満外科治療はどうなっているか」聞くと、土岐教授は「全てスリーブ手術(胃をバナナ1本くらいに細く小さくする手術)をしている。高度肥満の手術適応症例があれば、阪大消化器外科の宮崎安弘医師に紹介して下さい」と言われた。スリーブ手術は、胃のグレリンを分泌する部分を切除するので、空腹感が少なくなる。阪大での手術成績は、1年で平均110kgから80kgへ30kg減少している。
後輩医師は「ダヴィンチは、米国インテュイティヴサージカル社が開発した内視鏡下手術用ロボットで、1社が市場を独占しているため数億円と高く採算が取れない。日本は高い技術力を持っていて作れるのに販売できないのは、国の安全基準が厳しすぎて、認可されるまで何年もかかるからだ。日本の自動運転車が遅れているのも、国が公道での試行運転をなかなか認めなかったためだ」と言う。
消化器地域連携の会は、専門外の領域の最新の情報が入り興味深い。ダヴィンチは手洗い不要で、操作は患者から離れた所で座って行える。関節の可動域が広く、狭くて深い部位でも手術できる。今後競合機器が出現し価格が下がれば、広く使用されるようになるだろう。