学校スポーツ教育の目的と弊害

2018年10月10日

    20181078日、神戸国際会議場・神戸ポートピアホテルで、「第39回日本肥満学会」が開催された。

107日午後245分、山口香(かおり)スポーツ庁参与による特別講演「ライフスタイルとスポーツ習慣」があった。座長の小川渉神戸大学糖尿病・内分泌内科教授は「山口香さんは、1988年ソウルオリンピック柔道で銅メダルを獲得された。私たちのアイドルだった」と紹介された。山口香さんは、漫画"YAWARA"のモデルで、女姿三四郎と呼ばれていた。

山口香 表示スポーツ庁参与は「肥満を予防・改善していくためには食事と運動が必要だが、日本人のスポーツ実施率(週1回以上実施)は42.5%と諸外国に比べ低い。アンケート調査で、小学生はスポーツが好きな子供の方が多かったが、中学生は逆にスポーツが嫌いな子供の方が多かった。これは、学校部活動のやり方に原因があり、勝つことに重点を置き、楽しくするという指導をしていないためだ。

東京オリンピックがあった1960年代は"我慢と根性"で、やればやるだけ強くなるという指導がなされていた。ウサギ跳びや、水を飲まないことには、何の根拠もない。漫画"巨人の星"の星一徹は、今ではパワハラになる。

今は効率よく楽しむスポーツになっている。現在の日本のトップアスリートは、楽しみながらスポーツを行い、1960年代に比べ、より長い時間練習をしている。運動は生活習慣病予防に重要で、スポーツを中高年になっても続けるには、学生時代の部活動が好きでないと難しい。鈴木大地スポーツ庁長官は、13階まで歩いて階段を昇られ、体型を維持されている」と講演された。

私も小学校の頃、ピンポンが好きでよくしていた。19624月、中学校の卓球部に入部すると、2日間講堂でウサギ跳びだけをさせられた。ピンポン玉に一度も触れることなく両膝関節を傷め、1か月間寝たきりになった。もし、膝関節を傷めていなかったらゴルフもすることができ、違った人生になっていただろう。

1990年代になっても、学校の部活動で脱水症になり、市立病院に救急搬送されて来る生徒たちがいた。みな、我慢と根性で育った指導者の「水を飲むな」という指示を忠実に守り、隠れて水道水を飲まない真面目で責任感の強い部員たちだった。

ポートピアホテル1503号室に宿泊した。前に神戸国際会議場 表示とその広場、その向こうに六甲山が見える。左手には神戸の港 表示が見え、船が進む。

午後7時、神戸ポートピアホテル31階にあるフレンチレストラン「トランテアン」で肥満研究仲間と食事をした。窓の外に、神戸の街の夜景が見える。"カラフルな根菜とオマール海老と雲丹のサラダ 表示"は、喜寿(77歳)の色の紫色をしていた。

今の学校部活動は、勝つことに重点を置き、スポーツ嫌いの子供を増やしている。学校の部活は勝つためではない。強くなるためでもない。スポーツの楽しさを知り、仲間を作り、健康寿命を延伸するためにある。肥満は、動脈硬化症・糖尿病・認知症の要因となっている。高齢化が進む中、健康寿命の延伸には食事とともに運動が必要だ。そのためには、部活動を楽しいものにし、スポーツ好きな子供を増やし、生涯スポーツをして肥満の予防と改善につなげるとよい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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