映画「日日是好日」と平成最後の園遊会
2018年11月3日文化の日、黒木華&樹木希林共演の映画「日日是好日」を観に行った。
午後2時、館内は中高年者がほとんどで、杖をつきながら入って来る高齢者も多い。作品は森下典子のエッセイを映画化したもので、日日是好日(にちにちこれこうじつ)は禅語で"毎日が良い日だ"を意味する。
大学生の典子(黒木華)は、茶道教室の竹田先生(樹木希林)の指導を受けることになる。主人公が、お茶の世界に入り、成長していく姿が描かれている。同じ雨でも、春夏秋冬で音が違って聞こえるなど、茶道の奥深さがわかる。
先々月(9月15日)亡くなった樹木希林が、にこやかな顔をして病気を感じさせない演技をしていた。映画が終了すると、あちこちから「今日の映画はよかったですね」という声が聞こえてきた。
私の祖母(母の母)は、自宅でお茶を教えていた。写真
表示は、昭和15年(1940年)2月11日の実家で、お弟子さんに囲まれて中央にいるのが私の祖母、前列右端が叔母(三女)、後列右端が叔母(次女)だ。玄関の形、廊下、庭など映画「日日是好日」に出てくる家とよく似ている。
私の母は3人姉妹の長女で、写真
表示中央でお茶をしているのは祖母、右は次女の叔母、左は三女の叔母になる。広島県庄原市に帰省した時は、この部屋に簡易ベッドを置き、寝泊まりしている。78年経っても、部屋は変わっていない。
映画の中で、1か所違和感があった。障子を閉めた時、大きな音がしていた。私は「障子を閉めるときは音を立てないように、静かに閉めなさい」と躾けられて育った。とはいうものの、私もお茶会で大失態をしたことがある。
大学教養時代、"古典芸能文化同好会"に入っていて、大槻能楽堂などに行っていた。大阪市帝塚山のお茶会に出席した時、私たち学生以外は、全て着物を着た上品そうな御婦人方だった。私の所に回って来た"なつめ"をよく見ようとした時、なつめをひっくり返し、抹茶の粉が畳の上に散乱してしまった。今でも大学のクラスメートはよく覚えていて、その時のことを言われる。
11月9日、太極拳をしたあと、家に帰ってテレビをつけると、「平成最後の園遊会」のニュースをしていた。天皇皇后両陛下が雨の中、傘をさされて三谷幸喜さんらに声をかけられていた。
叔父の故沖原豊広島大学学長は教育学部教授時代、皇太子・美智子夫妻に御進講をしていた。「園遊会に招かれた時、天皇皇后両陛下が私の前に立ち止まり、声をかけていただいた。両陛下は、私のことをよく覚えておられた」と喜んでいた。
叔父はまた「御進講をしていたある時、おやつにサクランボが出た。サクランボを食べると種が出る。皇太子ご夫妻の前で、口から物を出すと失礼になる。"どうしたらいいものか"と迷っていたら、美智子妃が和紙を丸めて筒状にし、底になる部分を折り、口元を隠しながら、筒の中に種を出された。美智子妃のお気遣いで、私もサクランボを食べることができた」と話していた。
昭和から平成へ、平成もあと半年で終わる。「日日是好日」、人の一生で全く同じ日はない。二度と来ないその日一日を、ありのままに受け入れ精一杯に生きれば、人生は素晴らしいものになる。