月曜会と研修医教育・糖質制限食
2018年12月8日、大阪市中央区にある大阪国際がんセンターで、「第70回月曜会」が開催され、80名が参加した。
月曜会(大阪大学内分泌・代謝研究会)は、研修医の症例発表の登竜門となっている。私は25年前から毎年参加しており、市立病院内科部長時代の12年間は世話人をしていた。症例報告を見ると、研修医を指導教育する各病院部長の熱意を感じる。91歳になられる垂井清一郎阪大名誉教授も、杖をつきながら元気に出席されていた。
午後3時、症例報告が始まり、昨年より2題多い8題が発表された。大阪国際がんセンター内分泌代謝内科の丸川聡子医師は「免疫チェックポイント阻害薬により自己免疫関連副腎不全を発症した症例」のタイトルで、「悪性黒色腫に、ニボルマブ(オプジーボ)を投与した所、副腎不全が発症した」と発表された。
ニボルマム(オプジーボ)は、1型糖尿病・副腎不全・甲状腺機能障害・間質性肺炎・大腸炎・肝機能障害・腎障害・皮膚疾患など、患者さんの80%に副作用がある。がんの免疫療法は、本庶佑京大特別教授(阪大元教授)が2018年のノーベル賞を受賞されたくらい将来有望な治療法だが、まだまだ有効例は少なく、副作用も多い。
市立吹田市民病院内科の河崎彰子医師らは「過度な糖質制限と運動負荷によりケトーシスに至った2型糖尿病の一例」のタイトルで、「BMI 31.1の肥満糖尿病患者さんが、めまいと嘔吐を訴え入院された。スポーツジムに通い、1日50gの炭水化物(糖質)しか摂取していなかった。ケトーシスになっており、1600kcal、炭水化物200g(50%)の食事で回復した。最近、糖質を制限しようとする動きがある。学会では最低130gの炭水化物摂取が必要としている」と発表された。
私はフロアから、「7年前まで肥満症ガイドラインの食事療法を担当していた。炭水化物は50~60%としたが、委員の中には45%を主張する委員もいた。炭水化物100g以下の極端な糖質制限を推奨するテレビ番組があるが危険だ。軽い糖質制限食は今後の検討が必要だが、極端な糖質制限は健康に良くないことを、学会は発信していかなくてはならない」とコメントした。
開業している糖尿病専門医からは「極端な糖質制限をしているスポーツジムが不振になっている。極端な糖質制限を推奨しているコンビニもある」、医科大元教授からは「日本人はご飯を食べて長寿になっている。糖質を制限する必要はない」、日本糖尿病学会の食事療法を担当している医師からは「日本人で炭水化物を何%すればいいのか、大規模な論文がまだ出ていない。日本人のエビデンスが必要だ」と、コメントが相次いだ。
欧米では、炭水化物は少な過ぎても多すぎても、死亡率を高めることが、43万2179人のメタ解析で出ている。炭水化物のエネルギー摂取比率と死亡率を検討した結果、両者はU字型を示し、40~70%の場合に死亡率が最も低くなっている(Seidelmann他、Lancet 2018.9)。
糖質制限は脂肪や蛋白質を増やすことになり、動脈硬化症や腎障害を引き起こす可能性がある。どの程度に炭水化物を摂取するのがいいかは、長期の検討が必要だ。中庸は徳の至れり。肥満・糖尿病対策は、バランスの良い食事と適度な運動につきる。