海外出張者・旅行者の健康管理

2019年3月 3日

    2019223日、大阪市東淀川区にある"CIVI研修センター新大阪東"で「第24回海外勤務者健康管理研修会(日高秀樹座長)」があった。

午後2時、東京医大渡航者医療センターの濱田篤郎(あつお)教授による「海外出張者の健康管理対策」があり、「風邪薬・下剤・抗菌薬など携帯医薬品は、錠剤やカプセル剤を選ぶこと。てんかんや喘息のある人は、薬を持って行くこと。睡眠薬のサイレースとロヒプノールは、米国では禁止薬物となっているので持参しないこと。

途上国に滞在すると、半数が下痢を発症する。病原体の80%は細菌(毒素原性大腸菌など)によるので、抗菌薬(キノロン、アジスロマイシン)を準備しておくとよい。途上国では、氷や水道水は使わず、ミネラルウォーターを飲むこと。途上国の国立病院は貧しい人たちのためにあり、大行列で23日病院の前で待たされることがある。急病になった時は、少々高くても国立病院より私立病院を選び、私立病院の救急車を呼ぶこと。

航空機内の疾患には、エコノミークラス症候群があり、深部静脈血栓症が1000人に12人起こる。航空機内の気圧は80%と低く、狭心症を起こしたり、COPD(慢性閉塞性肺疾患)を悪化させたりする。

ドクターコールは600フライトに1件で、失神33%、消化器系15%、呼吸器系10%(JAMA 2018)となっている。ドクターコールの処置をして不幸な結果になっても、航空会社が全て責任をとるので、ドクターは訴えられることはない」と講義された。

大学時代のクラスメートは「AHA(米国心臓病学会)からの帰路、失神者のドクターコールがあり、起立性低血圧と診断。横に寝かせ水分を与えると回復した。航空会社から、記念品をもらった」と言っていた。阪大2内の後輩医師は、ドクターコールで尿管結石と診断。持っていたボルタレンで患者の痛みが止まり、エコノミークラスからビジネスクラスに席を上げてもらっている。

濱田篤郎教授は、また「海外に80万人の駐在者がいる。戦後、海外駐在者は増えつづけていたが、昨年初めて減少に転じた。駐在(1カ月以上)から、出張(1カ月未満)に切り換えたためだ。アンケート調査で、30%以上の企業が、"駐在から安い出張にすることを考えている"と回答している。

海外出張が多い例では、時間外労働時間が基準に達していなくても、過重労働として認められる場合がある。東京高裁は、死亡前の10か月間で海外出張10回、計183日の例で、海外出張という質的な面から過重労働を認めた」と講義された。

銀行OBの友人に聞くと「家族の費用など加わり、駐在の方が出張より高くつくことがある。フランス、ドイツなどでは帰国時、日本と違い借り手が家の修理費を払わないといけない。海外出張時の移動時間は、勤務時間と認められていない。ブラックな企業では、時間外勤務時間がオーバーしそうになった社員を、みなし労働として海外出張させている」と教えてくれた。

みなし労働時間制とは、労働基準法において、"その日の実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めておいた一定時間を労働時間とみなす制度"だ。産業医は、"海外出張が多い社員が、過重労働になっていないか"チェックする必要がある。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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