健都病診懇話会とC型肝炎撲滅へ
2019年9月7日、大阪市北区にあるホテルグランヴィア大阪で「健都病診懇話会」が開催された。
健都(けんと)とは北大阪健康医療都市の愛称で、吹田市と摂津市が"健康・医療のまちづくり"を進めている。JR京都線岸辺駅に直結し、国立循環器病研究センター(国循)、市立吹田市民病院、健都クリニックモールなどがある。
午後4時、市立吹田市民病院内藤雅文副院長による講演「肝炎治療における隔世の感―健都でのHCV撲滅へ」があった。
内藤副院長は「C型肝炎ウィルス(HCV)の治療は、5年前と現在とでは、隔世の感がある。直接作用型抗C型肝炎ウィルス薬(DAA)が発売され、治療できるようになった。WHOは"HCVは、世界では2030年に撲滅され、日本では2026年に撲滅される"としている。
2018年に健都に移転して入院患者が増加し、病床稼働率が100%を超える日もある。消化器疾患は1449例から1776例に増えた。消化器内科医は12名おり、消化管内視鏡検査は、年間4280例行なっている。大腸ポリープに対し、コールドスネアポリペクトミー(通電させないポリープ切除法で、切除後の出血・穿孔が極めて少ない)も行っており、心房細動で抗凝固薬を使用されている人でもできる。
2018年にC型肝炎の治療を行なったが、DAAのみで99%の人が治った。2019年のLancetには、C型肝炎やC型肝炎による肝硬変を対象とした研究で、"DAA治療群と無治療群の間で、生存率に大きな差が出た"と報告されている。日本には100万人弱、吹田市には3000~4000人のHCV感染者がいる。健都のHCV感染者を撲滅したい」と話された。
フロアからの「C型肝炎は再発することがあるのか」との質問に対し、「B型肝炎ウィルスは核の中に残っているので、リンパ腫の抗がん薬治療などで再燃することはあるが、HCVは死滅するので再発することはない」と答えられた。
午後5時30分、懇親会があった。内藤雅文副院長に「東日本の肝がん専門の教授が"日本のC型肝炎は、戦後満州や朝鮮半島からの引揚者が帰国した時に、進駐軍が予防接種に使用した注射針で広まった。引き揚げた港のある九州や大阪堺周辺に多い"と講演されたが本当か」聞くと、「そうかもしれない。C型肝炎は西高東低で、九州など西日本に多い。大阪でも北摂地区は少なく、大阪市より南の方に多い。治療薬ができて、よかった」と答えられた。
椿尾忠博市立吹田市民病院元総長と話をした。椿尾先生は阪大2内の3年先輩で、米国UCSDへ留学されていた1984年1月22日、ロサンゼルスから2時間かけて、サンディエゴにある先生の家に遊びに行ったことがある。
椿尾先生は「国循が老朽化し移転することになったが、国循には循環器部門しかない。国循に足りないところを、吹田市民病院で補完し、同じ場所に建てようということになった。国循総長と2人で、吹田市長の所に相談に行くと、"JR岸辺駅の北側の吹田操車場跡地が広いので、そこに移転するといいのでは"と言われた。紆余曲折があり、4年遅れになったが、健都へ移転できてよかった」と話された。
C型肝炎ウィルス(HCV)は、直接HCVを攻撃する薬(DAA)の治療により、世界では2030年、日本では2026年に撲滅されると予測されている。