第40回日本肥満学会と海堂尊「医療とは」
2019年11月2~3日、東京フォーラムで「第40回日本肥満学会(会長:横手幸太郎千葉大学内分泌・血液・老年内科教授)」が開催された。
11月2日午後0時、りんくう総合医療センターの増田大作氏によるランチョンセミナー「心血管イベント予防のための残余リスクの評価と治療」があった。
座長の中尾一和京大教授は、前から3列目に座っていた私を見つけられ「増田先生は、阪大循環器内科、その前は阪大第2内科におられた。徳永先生、後輩に鋭い質問をして下さい」と紹介された。2011年、淡路夢舞台で日本肥満学会が開催され、"肥満症診断基準"シンポジウムがあった。その時の、中尾先生と私たちとの激論は、今でも新聞記者の間で語り草となっている。
増田大作氏は「動脈硬化の脂質リスクとして、高LDLコレステロール血症がある。近年、中性脂肪リッチリポ蛋白の代謝産物"レムナント"が残余リスクであることが示された。小腸由来カイロミクロンレムナントの定量的評価には、アポ蛋白B 48測定が有用だ」と講演された。
フロアから私は「私の学位論文は、小児肥満のレムナントだった。動脈硬化ガイドラインの基になっている疫学調査は、肥満や内臓脂肪がリスクに入っていない不完全なものだ。・・肥満や内臓脂肪を中心とした前向き研究をするとよい」と、鋭いコメントをした。ランチョンセミナー後、中尾一和先生と固い握手をした。学会では激論を戦わせても、終わればノーサイドだ。
午後6時30分、海堂尊(たける)氏による特別講演「肥満と医学と文学と」があった。座長の横手幸太郎会長は「海堂尊氏とは、千葉大学医学部の同級生で、同じ剣道部にいた。海堂氏は1988年千葉大学卒業後、第1外科に入局、1997年放射線医学研究所、2006年「チーム・バチスタの栄光」で作家デビュー、2010年重粒子医科学センターAi情報研究推進室室長を歴任。・・」と紹介された。
海堂尊氏は「肥満の文学は少ない。"チーム・バチスタの栄光"の白鳥圭輔は、小説の中では小太りだが、阿部寛や中村トオルが演じ、スマートなイメージになっている。私にとって小説は子、映像は孫だと思っているので、白鳥圭輔が肥満でなくても気にしていない。
医療小説という言葉は、私が作った。医療小説というジャンルはあっても、医学小説というジャンルは存在しない。何故なら、医学には感情がないからだ。医療でも介護でも、心のない小説はない。日本のAi(Autopsy imaging:死亡時画像病理診断)導入の遅れに対し、怒りまくっていた頃は、講演依頼が殺到していた。4~5年前から大人になり、怒らなくなったら、講演依頼が激減した」と講演された。
日本肥満学会の井上修二2代目理事長は群馬県出身で群馬弁丸出し、松澤佑次3代目理事長は和歌山県紀伊半島南端の田辺市田辺高校出身、中尾一和4代目理事長は兵庫県の日本海に近い山間部にある養父市養父高校出身で、肥満学会は田舎出身の武骨者集団だった。
肥満学会では、肥満を軽視する医師・製薬会社・食品メーカー・国に対し、怒りのエネルギーが感じられていた。最近の日本肥満学会は、エネルギーが感じられなくなり、メディアも関心を持たなくなってきている。"日本肥満学会は、大人の学会になり過ぎてきたのではないか"と思った。