脂質異常の年次推移とメタボキャンペーン

2020年2月11日

    2020278日、東京都新宿区にある"京王プラザホテル"で「第48回日本総合健診医学会」が開催され、8名で参加した。

27日午前845分からの一般口演「脂質代謝」で、みどり健康管理センターの熊田佳子らによる「高non-HDLコレステロール血症の経年的推移と肥満・腹囲との関係」があった。

熊田氏は「高non-HDLC血症は動脈硬化性疾患の危険因子とされ、2018年度から日本総合健診医学会の必須項目に加えられた。そこで、高non-HDLC血症の経年的推移と、肥満・腹囲(内臓脂肪蓄積)との関係を検討した。対象は19914月から20193月、治療中も含む当センター健診受診者、延べ男性34422名、女性169354名で、non-HDLCは総コレステロールからHDLCを引いて求めた。高non-HDLC血症は170mg/dL以上、肥満はBMI 25以上、腹囲大は男性85cm、女性90cm以上とした。

non-HDLC血症の割合は、肥満者 表示は非肥満者に比べ、腹囲大者 表示は腹囲正常者に比べ、男女とも約2倍と有意に多かった。

non-HDLC血症の割合は、男性は1991年から2428%で推移していたが、2005年頃より低下し始め、2012年には17%まで低下した。女性も同様に1991年から2125%で推移していたが、2005年頃より低下し始め、2012年には10.4%まで低下した 表示。これは2005年のメタボリックシンドローム診断基準の確立、2008年からの特定健診・保健指導による生活習慣の改善、医療介入による服薬者の増加の影響と考えられた」と発表された。

座長の先生は「non-HDLC血症が減少したのは、2000年にストロングスタチン(強いコレステロール低下薬)が発売になったからだと、私は考えます」と強い口調で、断言された。

私はフロアから、「スタチンは、阪大2内の松澤佑次先生が総括者となって、1989年日本で最初に発売された。高non-HDLC血症が減り始めたのは2005年からで、ストロングスタチンが発売された2000年から5年間、高non-HDLC血症の割合は変化していない。ストロングスタチンでは、説明がつかない。

2005年にメタボリックシンドローム診断基準(内臓脂肪蓄積+高血圧・糖尿病・脂質異常)ができ、脂質異常が動脈硬化症によくないことが一般に認知された。脂質異常を指摘された人が、医療機関を受診したり、生活習慣を改善したりしたからではないかと思う」と切り返した。

メタボリックシンドロームの認知度は、20051月は10%しかなかったが、10月には80%になった。これは、NHKと産経新聞の影響が大きい。NHKと産経新聞には、阪大病院時代から随分協力した。

きょうの健康 表示「内臓脂肪型肥満 表示」や土曜フォーラム 表示「これが私の健康ダイエット 表示」などの出演、NHK「おはようラジオ」も、内臓脂肪型肥満の定義・診断から治療・予防まで、5日間連続で出演した。

産経新聞に「メタボ撲滅キャンペーン」の新聞記事 表示を載せたり、日本放送のラジオ番組に出演したり、「めざましテレビ」の番組制作にも協力した。

動脈硬化症の危険因子である"高non-HDLC血症"の割合は、メタボキャンペーンが始まった2005年から下がり始めた。健康に対するメディアの影響力は大きく、有効活用するとよい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について