脂質異常の年次推移とメタボキャンペーン
2020年2月7~8日、東京都新宿区にある"京王プラザホテル"で「第48回日本総合健診医学会」が開催され、8名で参加した。
2月7日午前8時45分からの一般口演「脂質代謝」で、みどり健康管理センターの熊田佳子らによる「高non-HDLコレステロール血症の経年的推移と肥満・腹囲との関係」があった。
熊田氏は「高non-HDLC血症は動脈硬化性疾患の危険因子とされ、2018年度から日本総合健診医学会の必須項目に加えられた。そこで、高non-HDLC血症の経年的推移と、肥満・腹囲(内臓脂肪蓄積)との関係を検討した。対象は1991年4月から2019年3月、治療中も含む当センター健診受診者、延べ男性34万422名、女性16万9354名で、non-HDLCは総コレステロールからHDLCを引いて求めた。高non-HDLC血症は170mg/dL以上、肥満はBMI 25以上、腹囲大は男性85cm、女性90cm以上とした。
高non-HDLC血症の割合は、肥満者
表示は非肥満者に比べ、腹囲大者
表示は腹囲正常者に比べ、男女とも約2倍と有意に多かった。
高non-HDLC血症の割合は、男性は1991年から24~28%で推移していたが、2005年頃より低下し始め、2012年には17%まで低下した。女性も同様に1991年から21~25%で推移していたが、2005年頃より低下し始め、2012年には10.4%まで低下した
表示。これは2005年のメタボリックシンドローム診断基準の確立、2008年からの特定健診・保健指導による生活習慣の改善、医療介入による服薬者の増加の影響と考えられた」と発表された。
座長の先生は「高non-HDLC血症が減少したのは、2000年にストロングスタチン(強いコレステロール低下薬)が発売になったからだと、私は考えます」と強い口調で、断言された。
私はフロアから、「スタチンは、阪大2内の松澤佑次先生が総括者となって、1989年日本で最初に発売された。高non-HDLC血症が減り始めたのは2005年からで、ストロングスタチンが発売された2000年から5年間、高non-HDLC血症の割合は変化していない。ストロングスタチンでは、説明がつかない。
2005年にメタボリックシンドローム診断基準(内臓脂肪蓄積+高血圧・糖尿病・脂質異常)ができ、脂質異常が動脈硬化症によくないことが一般に認知された。脂質異常を指摘された人が、医療機関を受診したり、生活習慣を改善したりしたからではないかと思う」と切り返した。
メタボリックシンドロームの認知度は、2005年1月は10%しかなかったが、10月には80%になった。これは、NHKと産経新聞の影響が大きい。NHKと産経新聞には、阪大病院時代から随分協力した。
きょうの健康
表示「内臓脂肪型肥満
表示」や土曜フォーラム
表示「これが私の健康ダイエット
表示」などの出演、NHK「おはようラジオ」も、内臓脂肪型肥満の定義・診断から治療・予防まで、5日間連続で出演した。
産経新聞に「メタボ撲滅キャンペーン」の新聞記事
表示を載せたり、日本放送のラジオ番組に出演したり、「めざましテレビ」の番組制作にも協力した。
動脈硬化症の危険因子である"高non-HDLC血症"の割合は、メタボキャンペーンが始まった2005年から下がり始めた。健康に対するメディアの影響力は大きく、有効活用するとよい。