出口戦略・大阪モデルとPCR検査問題
2020年5月4日、政府は「緊急事態宣言を31日まで延長する」と発表した。
対象地域は全国とし、大阪・兵庫・京都など13の「特定警戒都道府県」はそのままで、それ以外の34県では行動範囲が一部緩和される。しかし、"どうすれば休業要請が解除されるのか"出口戦略の具体的な数値は示されなかった。
5月5日、大阪府の吉村洋文知事は、独自の出口戦略として「大阪モデル」を発表された。基準は、① 感染経路不明の患者数が10人未満、② PCR検査での陽性率が7%未満、③ 重症患者受け入れ病床使用率が60%未満を7日連続満たせば、自粛要請を段階的に解除するとしている。5月4日の経路不明者は7.29人、陽性率は4.5%、病床使用率は33%になっている。
出口戦略の基準となる感染者数や陽性率をより正確に知るには、もっとPCR検査を増やさなくてはならないが、日本のPCR検査数は、諸外国に比べ極端に少ない。
午前9時頃、テレビをつけると、Aテレビ"羽鳥慎一モーニングショー"で玉川徹氏が、「この番組で、PCR検査を増やすよう指摘してから、1か月経っても、2か月経っても、PCR検査が一向に増えない。増やすには、いくらでも方法があった。例えば、全国に医学部がある。各都道府県にある医学部には、臨床医だけでなく、基礎の研究をやる研究員もいる。こういう人達に検査をまかせるようにすれば、マンパワーも足りたかもしれない。山梨大学の学長も『やれる』とおっしゃっている」と発言された。
私も、同じことを考えていた。今年3月初旬、バイトに来ている阪大病院の勤務医にPCRについて話を聞くと、「どの研究室でもPCRを使って研究している」と言う。「今、日本でコロナのPCR検査が不足している。大学でも測定できないのか」聞くと、「それはできない。コロナのために使うと、研究が遅れる」と言っていた。
非常時なので、M省が各大学に指示すればPCR検査数を増やすことは可能だ。大学病院の無給医や大学院生は、バイト収入で生活が成り立っている。4月になって、コロナ休業になっている健診センターが多い。健診センターが閉じて収入が減った大学病院の無給医に、国がお金を出してPCR検査をすれば無給医も助かる。
何故、K省がM省に協力を求めず、K省だけでPCR測定をしているのか。M省とK省は、仲が悪くて頼みにくいのではないかと推察していた。研修医制度ができた時、友人は「これはK省とM省の権力闘争だ。M省が握っている医局制度を崩し、医師の人事権をK省が握ろうとしている」と言っていた。
20年以上前、東京新橋にある協和企画で「小児肥満症」について会議があり、私は日本肥満学会を代表し、オブザーバーとして出席したことがある。その時、30歳代の若いK省とM省の方が参加しておられた。年配の委員が「珍しいですね。M省とK省は、仲が悪いのに」と言われると、M省の方は「2人は昔からの友人です。子供の肥満は、教育現場でも問題になっているので参加しました」と答えられていた。
緊急事態宣言の出口戦略として、大阪モデルが提唱された。基準にある感染者数や陽性率を正確に知るには、PCR検査を増やす必要がある。国は各大学に要請して、PCR検査を増やすとよい。